AM 7:50 校内食堂
ドーム状の天井越しに広がる人工の空の下、コーヒーメーカーの蒸気が白く立ち上っていた。
セイヤがブラックコーヒーを口にしていると、風紀組の面々が騒がしく集まってきた。
「朝から二人で並んでデスクワークねぇ」
リュウジが紙袋から出したパンをくわえ、ニヤリと笑う。
「公務だ」
「ほぉー、公務。7:00ぴったりに同時出勤な?」
「効率を追求した結果だ」
セイヤの即答に、ポックスが静かにトレーを置いた。
「統計的に見ても、二人の行動の一致率は有意に高いですね」
ミリィがストローをくるくる回しながら、悪戯っぽく身を乗り出す。
「でもさー、好きな人と毎朝一緒って、ちょっと特別じゃない?」
その瞬間、食堂の空気がわずかに震えた。
セイヤはコーヒーカップを置き、真っ直ぐにミリィを見つめた。
「特別だ」
一同の動きが止まる。
「好きな人と過ごす時間は、何物にも代えがたい。だからこそ、毎朝きちんと向き合いたいと思っている」
一切の照れも、淀みもない。あまりに堂々とした宣言に、リュウジがパンを落としかけた。
「……否定しねぇのかよ!?」
「なぜ否定する必要がある。事実だ」
「生徒会長の発言は常に論理的一貫性を保っています」
クロがゼリーを吸いながら淡々と補足し、ポックスが感心したように目を細めた。
「潔いですね」
「うわー、真っ正面……!」
ミリィが両手で頬を押さえる中、全員の視線がエミリアに集中した。
彼女はコーヒーカップを両手で包んだまま、石像のように固まっていた。耳の付け根まで真っ赤に染まったエミリアは、しばらく視線を泳がせていたが、やがて小さく吐息をついた。
「……そういうこと、ここで言う?」
「事実だ」
「皆の前で?」
「隠す必要はない。秩序とは誠実さの上に成り立つものだ」
あまりに堂々としたセイヤの回答に、食堂に沈黙が訪れ、直後、リュウジがこらえきれずに吹き出した。
「ははっ! お前、たまにとんでもない直球投げるよな」
「直球ではない。最適解を述べたまでだ」
ヴァルが穏やかに微笑む。
「……とても、素敵だと思います。」
ミリィがニヤニヤしながらエミリアの肩を突いた。
「で、エミリアはどうするの?」
エミリアは俯いたまま、指先でカップの縁をなぞっていたが、やがて顔を上げると、困ったような、それでいてひどく幸せそうな笑みを浮かべた。
「……ありがとう」
その一言は、人工太陽の光よりもずっと温かく、その場にいた全員の心を和ませた。セイヤは満足げに一つ頷くと、何事もなかったかのように残りのコーヒーを飲み干した。



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