宇宙生徒会長セイヤ 第71話②「生徒会長総選挙」

2.宇宙生徒会長セイヤ

前回のあらすじ
第1講堂に集まった2年生を前に、ハンク艦長は3年生から始まる「艦内実務研修」の開始を宣言する。セイヤたちはそれぞれの配属先を確認し、卒業後の多様な進路や残り1年となった学生生活に思いを馳せる。クロの居酒屋兼業に驚きつつも、彼らは最高学年としての決意を固め、次代を決める生徒会総選挙へと向かう。

登場人物紹介
■セイヤ  風紀を愛する生徒会長。今日も正論で突っ走る。
■ポックス 冷静沈着な副会長。論理を愛するバルタン星人。
■クロ   感情を得ようとする推定10億歳のアンドロイド。
■リュウジ 頼れる幼馴染。仲間思いの生徒会メンバー。
■ギル   岩石星人の風紀委員。見た目は怖いが五つ子の父親。
■カズマ  新聞部の特ダネ記者。艦内の噂話ならお任せ。
■エミリア 生徒会書記。優秀な参謀役でセイヤの彼女。ミリィの姉(双子)
■ミリィ  明るく元気な医療部志望。リュウジの彼女。エミリアの妹(双子)
■ヴァル  穏やかな流体生命体。優しさ溢れる癒やし担当。
■ハンク  艦長コスモ・アカデミア号艦長。豪快な性格。

生徒会長候補
①神崎レン(かんざきれん)
セイヤを心から崇拝する熱血優等生。セイヤからは真面目すぎて小さくまとまっている評価される。

②リア・ルミナ
惑星ソレイヤ出身の光精星人(こうせいせいじん)の優等生。誰からも信頼される人気者だが、憧れのエミリアを前にすると緊張して話せなくなる。

③グラン・ボルガ
異常に声が小さいシャイボーイだが、二児の父でもある岩石星人。どこか抜けている愛されキャラ。ギルの後輩。

④セリス・ノア
冷静沈着な論理派。現生徒会長はポックスがふさわしかったと考え、改革を掲げて立候補する。ポックスは戸惑っている。副会長候補

⑤朝比奈ユイ(あさひなゆい)
神崎レンの幼なじみ。暴走しがちなレンを支える為、副会長へ立候補した世話焼き少女。

⑥ゼル・ファル
翼をもったエアリオン星人。イベント好きで陽気な誰とでも仲良くなれる人気者。なぜかセイヤを尊敬している。

⑦モコ・プルン
ラッコ星人の少女?ほとんど喋らずいつも何かを食べながらぷかぷか漂っている癒し系。書記候補

⑧白石ナギ(しらいしなぎ)
新聞部所属。常にメモ帳を持ち歩き、情報公開を重視する真面目な記録係。
カズマの後輩。

⑨イリス
木の妖精のようなアルボリア星人。おっとりとした美人で、少数意見にも耳を傾ける心優しい性格。ヴァルのお気に入り。

⑩ネオ
見た目は地球人だが機械100%のアンドロイド。居酒屋KUROを学食へ誘致したいという独特な公約を掲げるが…会計候補

⑪双葉ユウト(ふたばゆうと)
堅実で責任感の強い努力家。真面目すぎるあまり、少々融通が利かない一面もある。

⑫ガンマ
四本腕を持つカルキア星人。几帳面な計算力と明るい性格で、誰からも親しまれる人気者。ゼルと馬が合い、ふたりが絡むと何かが起こる?

第1章 「新たな季節」

 第2章「立候補者たち」

 翌朝、第一講堂を埋め尽くした全校生徒の間に、得も言われぬ緊張感が漂っていた。昨日行われた三年生の進級説明会とは明らかに空気が違う。誰もが浮き足立ち、これから告げられる「ある発表」を固唾をのんで待っていた。やがて、重厚な足音とともにハンク艦長が壇上へ姿を現す。その瞬間、喧騒は潮が引くように消え去り、会場は静寂に包まれた。「諸君」低く、それでいて腹の底に響くような力強い声が、講堂の隅々にまで行き渡った。

「本日より、第三十二期生徒会総選挙を実施する」

その一言が放たれた瞬間、静まり返っていた会場が、堰を切ったようなざわめきに包まれた。壇上の巨大スクリーンへ、鮮やかな文字が映し出される。

【第三十二期生徒会総選挙】
■募集役職
・生徒会長
・副会長
・書記
・会計


「立候補の受付期間は、本日から三日間とする」

ハンク艦長は、騒然とする生徒たちを真っ向から見据え、淡々と、だが厳格に言葉を重ねた。

「立候補資格は一年生、および二年生。なお、現生徒会執行部は選挙管理委員として、本選挙の運営にあたるものとする」

スクリーンが切り替わり、新たなリストが表示される。

【選挙管理委員】セイヤ、エミリア、リュウジ、ポックス、クロ、ギル、ミリィ、ヴァルその顔ぶれを見たカズマが、堪えきれずに苦笑を漏らした。

「……結局、最後まで働くのかよ」

ぼやきとも取れるその言葉に、隣にいたエミリアが楽しげに目を細める。

「いいじゃない。私たちの、最後の仕事よ」

二人のやり取りを背中で聞きながら、セイヤは壇上で静かに敬礼を捧げた。

「了解しました」

 放課後。生徒会室は、久しぶりに活気ある慌ただしさに包まれていた。

「クロ、受付システムの最終確認を頼む」

セイヤの指示に、クロが短く応じる。

「了解しました」

壁一面のモニターへ、次々と立候補受付用の画面が展開されていく。その隣では、ポックスが端末を叩きながら投票システムのチェックを行っていた。

「電子投票、紙投票、および二重認証プロトコル。すべて異常ありません」

「よーし!こっちは新聞部特別号だ!候補者紹介、気合入れて取材しまくるぞ!」

カズマが腕まくりをして威勢よく笑うと、リュウジが呆れたように肩をすくめた。

「お前は相変わらず元気だな……」


 翌日。立候補受付会場。受付開始のチャイムと同時に、一人の男子生徒が勢いよく扉を蹴破らんばかりの勢いで開けた。

「神崎レン!生徒会長に立候補します!」

迷いのない叫びとともに、彼は深々と敬礼した。その指先まで神経の行き届いたあまりにも見事な敬礼に、セイヤは無意識のうちに背筋を伸ばし、同じ角度で敬礼を返してしまう。その光景を横で見ていたリュウジが、深く、深く頭を抱えた。

「……ああ、もう嫌な予感しかしねぇ」

レンは淀みのない手つきで受付用紙を書き終えると、真っ直ぐにセイヤの前へと歩み寄った。

「セイヤ先輩!あなたの教えは、この神崎レンがすべて記録しております!」

彼はそう宣言すると、制服の胸ポケットから一冊の分厚いノートを取り出した。使い込まれたその表紙には、力強い筆致で『セイヤ語録第七巻』と記されている。

「なな、七巻……?」

エミリアが思わずといった様子で目を丸くする。そんな彼女の驚きを余所に、レンは至極誇らしげにノートのページをめくった。

「第三十五章!『恋愛も風紀の一部だ』!
第四十二章!『遅い球ほど心は速い』!
さらに第五十八章!『腹が減ったら食って、眠たくなったら寝ろ』!」

朗々と読み上げられる「語録」の内容に、リュウジがこらえきれずに叫んだ。

「……ろくなもんじゃねぇな!」

だが、レンの眼差しは真剣そのものだった。

「まだまだありますよ!私はセイヤ会長のすべてを継承し、あなたを超える生徒会長になります!」

セイヤは少し考え、静かに頷いた。

「期待している」

レンは感激のあまり、その場で涙ぐむ。

「ありがとうございます!」

その様子を横目で見ていたリュウジが、呆れたように小さく呟いた。

「……セイヤ以上にズレてやがる」

鋭い目つきでセイヤがつぶやく。

「良くも悪くも真面目だな。一皮むければ化けるかもな」
「何様だよお前は!」

リュウジの鋭いツッコミが響く。

――その直後。「失礼します」落ち着いた声とともに、一人の女子生徒が受付へやって来た。淡く光る長い金髪。光精星人(こうせいせいじん)特有の、柔らかな輝きをまとった少女――リア・ルミナだった。

「生徒会長に立候補します」

穏やかな笑顔を浮かべ、彼女は淀みなく手続きを進めていく。受付を済ませると、彼女はゆっくりとエミリアの方へ向き直った。

「あ……その……えっと……」

固まった。完全に固まった。みるみるうちに、リアの顔が真っ赤に染まっていく。その様子に、エミリアが優しく微笑みかけた。

「リアさん?そんなに緊張しなくても大丈夫よ」

だが、リアはすでに限界だった。

「わ、私……ずっと……エミリア先輩に憧れていて……。今日、お話できて……もう……無理です!」

その場でぺこりと勢いよく頭を下げると、彼女は逃げるような足取りで走り去っていった。その初々しい姿に、ミリィが思わず吹き出す。

「ふふっ、かわいい」

 三人目の立候補者が現れた。大柄な体躯の岩石星人(がんせきせいじん)が、静かに、だが確かな重量感をもって受付の前に立つ。

「グラン・ボルガ……」

地鳴りのような低音。しかし、その声はとんでもなく小さく、目の前にいるミリィにさえ聞き取ることができなかった。

「……えっ?」

ミリィが思わず耳を疑うように身を乗り出す。

「あの、どうかしましたか?」

「グラン・ボルガ……」

彼はもう一度口を動かしたが、やはり囁くような微かな音しか漏れてこない。

「……会長に立候補します」

かろうじて何かを言ったような気配を感じ、ミリィは困り顔で問い返した。

「すみません、今なんて言いました?」

そこへ、見かねたギルが割って入った。

「グラン、もっと大きな声を出せ!何も聞こえなかったぞ」

指摘されたグランは、大きな体を縮こまらせて恥ずかしそうにモジモジしている。
その様子にギルがしびれを切らしたように言った。

「すまん。こいつも会長に立候補するようだ」

ミリィが戸惑いながらも受付を済ませ、手渡された書類に目を落とす。すると、家族構成の欄には『配偶者一名、子供二名』と記されていた。

「……って、パパさん!?そんなにシャイなのに、実はしっかり家庭持ってるんかーい!」

ミリィの鋭いツッコミを背に、グランはぺこりと頭を下げて去っていった。ギルがその大きな後ろ姿を見送りながら、短く呟く。

「頑張れよ」

 続いて現れたのは、知的な雰囲気を漂わせる青い髪の少女だった。

「セリス・ノア。生徒会長に立候補します」

淡々と手続きを済ませた彼女は、ふと傍らにいたポックスへと視線を向けた。

「私は、現生徒会長の座には本来、ポックス先輩が就くべきだったと考えています」

その一言に、室内の空気が凍りついた。沈黙を破ったのは、先ほど受付を終えたばかりのレンだった。彼は勢いよく立ち上がり、セリスを指差す。

「異議あり!セイヤ会長こそが最高にして至高!次期会長も、その魂を継ぐ者であるべきだ!」

対するセリスは、眉ひとつ動かさずに冷徹な視線を返した。

「感情論ですね。論理的ではありません。セイヤ会長の実績そのものは認めますが、純粋な生徒会運営能力のみを評価するならば、ポックス先輩の方が適任です」

「セイヤ会長のすごさはな、理屈じゃないんだ!会長がそこにいるだけで、なぜかみんな幸せになる。それがカリスマってものだろう!」

レンが熱弁を振るうが、セリスは冷ややかな態度を崩さない。

「それは単なる偶然、あるいは生存者バイアスによる錯覚です」

「なんだと!?お前には絶対負けないからな!」

火花を散らす二人を眺めながら、リュウジが投げやりな調子で声をかける。

「まあ、どっちも頑張れ。熱いのはいいことだ」

当のポックスだけは、困惑の表情を浮かべながらポツリ。

「……私を議論の的にするのはやめていただけませんか。非常に迷惑です」

セリス・ノアが去り、受付会場に束の間の静寂が戻った。

 その静寂を破るように、一人の女子生徒が元気よく手を挙げながら歩み寄ってくる。

「はいっ!朝比奈ユイです!副会長に立候補します!」

受付用紙を書き終えると、隣で神崎レンが大きく手を振った。

「ユイ!一緒に最高の生徒会を作ろう!」

その熱烈な歓迎に、ユイは苦笑しながら肩をすくめてみせる。

「違う違う。私は、レンが暴走した時に止めるために出るの」

「え?」

レンが、魂が抜けたように固まった。

「えぇぇぇっ!?」

そのやり取りを見て、リュウジが笑いを堪えきれずに吹き出した。

「ははっ!もうブレーキ役が立候補してやがる!」

ミリィたちも、エミリアを見て笑う。

「あの子も苦労しそうね……」

エミリアは、かつての自分を見るような眼差しで、溜息まじりに同情を寄せた。


 その直後、軽快な足取りで一人の青年が現れた。背中にはエアリオン星人特有の半透明な翼が、感情の高ぶりに合わせるように小刻みに震えている。

「ゼル・ファル!副会長に立候補します!」

快活な宣言とともに、彼は身を乗り出すようにして公約を掲げた。

「私が副会長になったら、毎月イベントを開催します!学園祭も二倍!文化祭も二倍!ついでに休日も二倍だ!」

そのあまりに無茶な公約に、リュウジが思わず身を乗り出して突っ込んだ。

「休日は二倍にならねぇよ!あと学園祭も文化祭も同じ行事だろ、勝手に分けるな!」

「ははっ、細かいことは気にしない!」

ゼルは悪びれる様子もなく、爽やかに笑い飛ばした。

「人生は楽しまなきゃ損ですからね!」

「いいねぇ、イベントするなら会計へ立候補する私も混ぜてほしいですねぇ」

ひょっこりと顔を出したのは、四本の腕を持つカルキア星人の青年だった。

「ガンマです!会計へ立候補します!」

元気いっぱいの笑顔でゼルと握手を交わすと、続いて受付担当のミリィとも握手を交わす。ガンマはそのまま、その場にいた選挙管理委員会のメンバーや、すでに登録を済ませた候補者たち全員に挨拶をして回り始めた。

「よろしくお願いします!」

「こちらこそ!」

「お互い頑張りましょう!」

四本の腕を器用に動かして次々と握手を交わし、あっという間に会場の全員と打ち解けてしまう。その驚異的なコミュニケーション能力を目の当たりにして、リュウジが感心したように声を漏らした。

「なんだか、仕事のできるビジネスマンみたいだな」

リュウジが感心したように声を漏らすと、ガンマは照れくさそうに四本の腕を動かして笑った。

「いえいえ!みんなで作り上げる生徒会ですから!」

 
 続いて現れたのは、小柄なラッコ星人の少女だった。宙を泳ぐように、ぷかぷか、ぷかぷかとゆっくり受付の前まで漂ってくる。彼女は何も喋らず、ただ一通の受付票を差し出した。受付票には『モコ・プルン副会長』と記されている。ミリィがそれを受理すると、モコは満足そうに小さく頷いた。そして、どこからともなくおにぎりを取り出すと、その場でもぐもぐと幸せそうに食べ始めた。その様子を横目で見ていたリュウジが、呆れたように小声で呟く。

「……おい、なんか喋れ(笑)」

すると、隣にいたクロが淡々と解説を加えた。

「ラッコ星人は感情表現の大半を行動で示します。言語を発することは稀で、数年に一度と言われています」

そんな説明を余所に、モコは満足そうにもう一個おにぎりを取り出すと、幸せそうに頬張り始めた。


 続いて受付へ現れたのは、新聞部の腕章を付けた少女だった。左手には分厚いメモ帳、右手には鉛筆を握りしめている。

「白石ナギです。書記に立候補します」

淀みなく受付を済ませると、ナギは傍らにいたカズマへと真っ直ぐに向き直った。

「カズマ先輩。生徒会議事録、第三十一期分をすべて拝読させていただきました」

カズマが驚愕の声を上げる。

「全部か?」

「はい。計三百四十二冊、すべてです」

「全部……!?」
絶句するカズマに対し、ナギは表情一つ変えずに淡々と告げた。

「情報は公開され、共有されてこそ価値があります。それが私の信念ですから」

そう言うなり、彼女はまた手元のメモ帳にさらさらと何かを書き込み始めた。その徹底した記者魂を目の当たりにして、カズマは呆れを通り越し、嬉しそうに口角を上げた。

「……全くだ。とんでもなく頼もしい後輩が入ってきたもんだぜ」


 次に姿を見せたのは、淡い緑色の長髪を揺らす少女だった。まるで深い森から歩み出てきた妖精のような、神秘的な雰囲気をまとったアルボリア星人。

「イリスです。書記へ立候補します」

柔らかな笑みを浮かべ、彼女は鈴の鳴るような声で続けた。

「大きな声だけではなく、届きにくい小さな声にも、しっかりと耳を傾ける生徒会を目指します」

その穏やかな言葉が響くと、騒がしかった受付会場の空気が、まるで春の陽だまりのように優しく和らいだ。その様子を傍らで見ていたヴァルが、思わずといった様子で目を細める。

「……とても、素敵な方ですね」


 続いて現れたのは、人間と見紛うほど精巧な造りの青年だった。しかし、その一切の無駄を削ぎ落とした機械的な足取りが、彼が人間ではないことを雄弁に物語っている。

「アンドロイド、ネオ」

抑揚のない、だが明瞭な声が響く。

「書記へ立候補します」

手続きを終えると、ネオは無機質な視線をクロへと向けた。

「第一公約を提示します。学食へ『居酒屋KURO』を誘致すること」

「営業時間が確保できません」
クロの即答に、ネオは淡々と問い返す。

「否決ですか」

「はい」

「残念です」

無機質なやり取りが続く中、クロがふと思案するように言葉を継いだ。

「しかし、私が退学して『居酒屋KURO』の経営に専念すれば、誘致は可能です」

「それでいきましょう」

ネオが即座に同意した。

「ダメに決まってるだろー!!!」

これにはリュウジだけでなく、ミリィ、エミリア、ヴァルの三人も一斉に突っ込みを入れた。

「おい!そこの二人!『ありかも』って顔すんな!」

セイヤとポックスの二人を見て、リュウジが絶叫する。その光景に、受付会場はドッと大きな爆笑に包まれた。リュウジは笑いながら、肩をすくめて言い放つ。

「まったく……選挙が始まる前に公約ひとつボツったな!」

続いて現れたのは、眼鏡の奥に鋭い知性を光らせるガッシリした体格の少年だった。

「双葉ユウトです。会計へ立候補します」

彼は淀みのない動作で受付票を提出すると、それとは別に一冊の分厚い資料を差し出した。そこには、一円単位まできっちりと揃えられた、まるで精密機械が作成したかのような家計簿形式の予算案が記されていた。

「私が会計になった暁には、予算管理における誤差ゼロを徹底します」

その徹底した管理能力を目の当たりにして、論理を愛するポックスが感心したように声を漏らす。

「……実に見事な几帳面さですね」

ユウトは表情を崩すことなく、真剣な眼差しで深く頷いた。

「当然です。一円の狂いは、組織の信頼の狂いと同義ですから」

やがて、夕刻を告げるチャイムが校内に響き渡った。クロが静かに報告する。

「立候補受付終了。」
「候補者十二名。」

大型モニターに、確定した候補者たちの名前が整然と並び映し出される。

【生徒会長候補】
神崎レン、リア・ルミナ、グラン・ボルガ、セリス・ノア

【副会長候補】朝比奈ユイ、ゼル・ファル、モコ・プルン

【書記候補】白石ナギ、イリス、ネオ

【会計候補】双葉ユウト、ガンマ

その一覧を眺めながら、リュウジが感心したように腕を組んだ。

「なんか……今回の連中は、みんなそれなりにまともだな」

その言葉に、エミリアがくすりと笑う。

「何たって、セイヤと比べたらね」

ミリィも楽しげに同意した。

「本当。これなら安心して任せられそう」

ポックスは冷静に、だがどこか満足げに頷いた。

「思想こそ違いますが、皆それぞれに明確な信念を持っています」

クロが淡々と、しかし確信を込めて言葉を継ぐ。

「歴代でも、非常に優秀な候補者たちです」

エミリアは候補者一覧を見つめながら、慈しむように微笑んだ。

「みんな、自分の理想の生徒会を目指している……。それだけで、今は十分よ」

最後にセイヤが、静かにモニターへと視線を向けた。そして、確信を込めて小さく頷く。

「これなら、安心して任せられるな」

その言葉に、生徒会室の全員が晴れやかな笑顔で頷き返した。窓の向こうには、どこまでも広がる深い星々の海が広がっていた。このコスモ・アカデミア号という巨大なゆりかごの中で、新しい時代が産声を上げようとしている。

 「史上最悪」とも「癖の強さ歴代最強」とも称された、あまりに型破りな彼らの任期が、今まさに終わろうとしている。宇宙の静寂に包まれながら、この場所で育まれた熱い意志は、確かに次の世代へと受け継がれていく。

しかし、モニターに並んだ十二名の瞳には、すでに譲れない「野心」の火が灯っていた。次代の座を懸けた、前代未聞の熱き戦いの火蓋が、今まさに切られようとしている。

(第3章へ続く)

 
 

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