宇宙生徒会長セイヤ 第71話③「生徒会長総選挙」

2.宇宙生徒会長セイヤ

前回のあらすじ
第32期生徒会選挙の受付が終了。無口なモコ、記録を重んじるナギ、心優しいイリス、学食改革を狙うネオ、几帳面なユウト、陽気なガンマら個性豊かな12名が出揃った。現執行部は彼らの熱意を認め、次代への継承を確信する。型破りな現体制の任期終了が近づく中、野心を抱く候補者たちによる熱き戦いの幕が上がる。

登場人物紹介
■ セイヤ  風紀を愛する生徒会長。今日も正論で突っ走る。
■ ポックス 冷静沈着な副会長。論理を愛するバルタン星人。
■ クロ   感情を得ようとする推定10億歳のアンドロイド。
■ リュウジ 頼れる幼馴染。仲間思いの生徒会メンバー。
■ ギル   岩石星人の風紀委員。見た目は怖いが五つ子の父親。
■ カズマ  新聞部の特ダネ記者。艦内の噂話ならお任せ。
■ エミリア 生徒会書記。優秀な参謀役でセイヤの彼女。ミリィの姉(双子)
■ ミリィ  明るく元気な医療部志望。リュウジの彼女。エミリアの妹(双子)
■ ヴァル  穏やかな流体生命体。優しさ溢れる癒やし担当。


生徒会長候補
① 神崎 レン(かんざき れん)
セイヤを心から崇拝する熱血優等生。セイヤからは真面目すぎて小さくまとまっていると評価される。

② リア・ルミナ 
惑星ソレイヤ出身の光精星人(こうせいせいじん)の優等生。誰からも信頼される人気者だが、憧れのエミリアを前にすると緊張して話せなくなる。

③ グラン・ボルガ 
異常に声が小さいシャイボーイだが、二児の父でもある岩石星人。どこか抜けている愛されキャラ。ギルの後輩。

④ セリス・ノア 
冷静沈着な論理派。現生徒会長はポックスがふさわしかったと考え、改革を掲げて立候補する。ポックスは戸惑っている。

副会長候補
⑤ 朝比奈 ユイ (あさひなゆい)
神崎レンの幼なじみ。暴走しがちなレンを支えるため、副会長へ立候補した世話焼き少女。

⑥ ゼル・ファル 
翼をもったエアリオン星人。イベント好きで陽気な誰とでも仲良くなれる人気者。なぜかセイヤを尊敬している。

⑦ モコ・プルン 
ラッコ星人の少女?。ほとんど喋らず、いつも何かを食べながらぷかぷか漂っている癒し系。

書記候補
⑧ 白石 ナギ (しらいしなぎ)
新聞部所属。常にメモ帳を持ち歩き、情報公開を重視する真面目な記録係。カズマの後輩。

⑨ イリス 
木の妖精のようなアルボリア星人。おっとりとした美人で、少数意見にも耳を傾ける心優しい性格。ヴァルのお気に入り。

⑩ ネオ 
見た目は地球人だが機械100%のアンドロイド。居酒屋KUROを学食へ誘致したいという独特な公約を掲げるが…

会計候補
⑪ 双葉 ユウト(ふたばゆうと) 
堅実で責任感の強い努力家。真面目すぎるあまり、少々融通が利かない一面もある。

⑫ ガンマ 
四本腕を持つカルキア星人。几帳面な計算力と明るい性格で、誰からも親しまれる人気者。ゼルと馬が合い、ふたりが絡むと何かが起こる?

第3章「先輩たちの最後の仕事」

  第32期生徒会総選挙の結果が公示された日の放課後。 生徒会室を包んでいたのは、嵐の去った後のような、どこか穏やかで柔らかな空気だった。
選挙管理委員としての最後の大仕事を終えたセイヤたちは、黄金色に染まり始めた窓の外を眺めている。眼下の校庭では、次代を担う後輩たちがそれぞれの放課後を謳歌していた。
リュウジがソファへ深く腰を下ろし、天井を仰いで大きく伸びをした。

「この部屋とも、今日でおさらばかぁ……」

「本当だね。最初はセイヤについていけるのか心配だったけど、何とかなるもんだね!」

ミリィが隣で温かく微笑む。

「私も、転校してきたばかりの頃はすごく不安でした」

ヴァルがしみじみと零すと、リュウジが懐かしそうに目を細めた。

「ああ、みんなでヴァルを探し回ったこともあったっけな」

「ふふ、その節は大変ご迷惑をおかけしました」

「私も転校したての頃は、セイヤにどうしても同意できなくて、よく食ってかかっていたわ」

エミリアも窓の外へ視線を向け、懐かしむように目を細めた。

「エミリアなんて、最初はセイヤのことを言い負かしてばかりだったのにね。今じゃセイヤにメロメロなんだから!」

ミリィが茶化すように笑うと、エミリアは顔を赤くして声を上げた。

「ちょっ! そんなことないわよ!」

ポックスが静かに頷く。 「セイヤ会長は全く論理的ではないのですが、なぜかみんなついていってしまう。そして最終的に最善の結果をもたらす」

セイヤは静かに腕を組み、校庭でサッカーに興じる後輩たちを見つめていた。

「いい顔をしている。……少し安心した」

ふっと表情を緩め、隣の副会長を振り返る。

「ポックスが会長だったとしても、同じ結果だったと思うぞ。
俺たちはみんな、向いている方向は同じだった。もし俺が間違った方向を見ていたら、ポックスやエミリア、リュウジが正してくれていただろう。
同じ方向を向いて、俺たちが真剣に取り組んだ結果だ。いい結果が出るに決まっている」

「だな」

ギルが短く呟き、深く同意するように頷いた。

その時だった。  バンッ! と生徒会室の扉が勢いよく開く。
現れたのは、アンドロイドのネオだった。

「ネオ、選挙は残念だったね」

ミリィが気遣わしげに声をかけると、ネオは表情を変えずに頷いた。

「はい。ですが、その件でクロ先輩に相談がありまして」

「なんでしょう」

クロが淡々と応じる。

「私を居酒屋KUROで雇っていただけないでしょうか」

「志望動機を教えて下さい」

クロが質問する。

「いきなり面接っぽくなったな」

リュウジが思わずツッコミを入れ、生徒会室に小さな笑いが広がった。
ネオは一度姿勢を正し、淡々と答え始める。

「居酒屋KUROは、学食への出店こそ実現できませんでした。しかし、多くの人々に笑顔を届けている施設です。
そこで、クロ先輩のような接客を学びたいと考えています。
……そして、私もその中で働いてみたいと感じました」

クロは数秒間、無言で演算を続けた。やがて、静かに口を開く。

「非常に感情的な理由ですね。……解りました、採用します」

「ありがとうございます」

二人は無表情のまま、しかし力強く、固い握手を交わした。

「早っ!」

リュウジが勢いよく立ち上がった。

「履歴書も見てねぇぞ!」

「必要ありません」
クロは即答した。

「ネオの接客シミュレーション能力は私と同等です。いえ、むしろ私より高い可能性があります」

「店長の座を奪われるなよ」

カズマが冷静に釘を刺すと、クロは淡々と返した。

「その場合、私は副店長になります」

「降格してるじゃねぇか!」

リュウジのツッコミに、再び部屋は温かな笑いに包まれた。

ネオは深く頭を下げた。

「本日より、お世話になります」

「歓迎します」

クロも丁寧に一礼を返す。
すると、ヴァルも柔らかな笑みを浮かべて挨拶に加わった。

「私も引き続き、おでんの料理を担当しますから。よろしくね」

それを見届けたネオは、満足そうな足取りで生徒会室を後にした。
部屋には再び、穏やかな静けさが戻る。
その時、廊下から複数の足音が近づいてきた。
コンコン、と控えめなノックの音が響く。

「失礼します」

扉が開き、新しく当選した四人が姿を現した。

会長、リア・ルミナ。
副会長、ゼル・ファル。
書記、イリス。
会計、ガンマ。

四人は横一列に並ぶと、一斉に深く頭を下げた。

「長い間、ご指導ありがとうございました」
「明日からこのメンバーで、新しい生徒会を盛り上げていきたいと思います!」

リアが代表して言葉を述べる。
エミリアは優しく微笑んだ。

「リアさん、おめでとう」
「ありがとうございます!」

憧れの人に声を掛けられ、リアはまた顔を真っ赤にしてしまう。  
ゼルは元気よく拳を握った。

「副会長として、学園をもっともっと楽しくします!」

「イベントはほどほどにな」

ポックスが手を差し出すと、ゼルは勢いよく応じた。
「はい!」
「……たぶん」

「たぶんかよ!」  リュウジがすかさずツッコミを入れる。

イリスは穏やかに微笑んだ。
「皆さんが築いてくださった生徒会を、大切に受け継いでいきます」

ヴァルも嬉しそうに頷く。
「応援していますね」

最後にガンマが四本の腕を胸の前で揃え、深々と頭を下げた。

「皆さんが安心して卒業できるよう、精一杯頑張ります!」

セイヤは四人の顔をゆっくりと見渡した。誰の瞳にも、不安より決意が宿っている。その姿を見て、彼は小さく頷いた。

「任せた」

短い一言。しかし、その言葉には一年間、生徒会長として積み重ねてきたすべての想いが込められていた。

リアたちは力強く返事をする。

「はい!」

四人は深々と一礼すると、晴れやかな表情で生徒会室を後にした。
扉が静かに閉まる。
夕日が部屋を橙色に染めていた。誰も言葉を発しない。ただ、それぞれがこの部屋で過ごした日々を思い返していた。

初めて集まった日。
笑った日。
喧嘩した日。
そして、数え切れないほどの事件を乗り越えてきた日々。

リュウジが照れくさそうに頭を掻き、短く笑った。

「終わっちまったな」

「ええ」

エミリアが静かに、噛み締めるように答える。

「でも、不思議と寂しいだけじゃないわ」

ミリィも隣で深く頷いた。

「うん。ちゃんと次につながったもんね」

その様子を見届け、ポックスが静かに締めくくった。

「これが世代交代というものなのでしょう」

カズマがカメラを構え、威勢よく声を上げた。

「よーし! 最後に写真撮ろうぜ」

「そうだな」

リュウジが賛成し、メンバーが自然と集まりだす。
カズマはファインダーを覗きながら指示を飛ばした。

「みんな並んで。ヴァル、もうちょっとポックス側に寄って。……ポックス、表情が硬いぞ、スマイル!」

「善処します」
その返事に皆の顔がさらに笑顔になる。

「いくぞ、五秒後にシャッター切るからな!」

セルフタイマーをセットすると、カズマは慌ててみんなの列に走り寄った。

「五、四、三、二、一……カシャッ!」

「全員分、現像したらちょうだいね」
ミリィが弾むような声で言うと、カズマは親指を立てて応じた。
「おう! まかせとけ」

 セイヤは最後に、部屋の中をゆっくりと見渡した。  西日に照らされた窓際の机。壁に並ぶ歴代会長の写真。何度も議論を重ねたソファと会議机。

そのすべてが、かけがえのない大切な思い出だった。
やがて、生徒会室の入口まで歩くと、彼は静かに振り返った。
背筋を真っ直ぐに伸ばし、いつものように右手を額へ。
凛とした敬礼。

「……ありがとうございました」

小さく、しかし確かな声で呟くと、彼は一礼して生徒会室を後にした。 
夕日に照らされた扉が、静かに閉まる。

こうして、生徒会長セイヤの物語は幕を閉じた。
そして、新たな物語が始まる。

その新しい一歩が、静かに、しかし確かに踏み出されたのだった。


「明日からみんなバラバラだな……」

「業務終わったら、居酒屋KUROに集合ね!」

廊下に響く彼らの声は、どこまでも明るかった。

宇宙生徒会長セイヤ 完

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