登場人物紹介
■ セイヤ 風紀を愛する生徒会長。今日も正論で突っ走る。
■ ポックス 冷静沈着な副会長。論理を愛するバルタン星人。
■ クロ 感情を得ようとする推定10億歳のアンドロイド。
■ リュウジ 頼れる幼馴染。仲間思いの生徒会メンバー。
■ ギル 岩石星人の風紀委員。見た目は怖いが五つ子の父親。
■ カズマ 新聞部の特ダネ記者。艦内の噂話ならお任せ。
前回のあらすじ
惑星フロストガルド目前で磁気嵐を抜けた生徒会一行を、無数の小惑星群が襲う。クロの操縦で回避を試みるも、機体後部に被弾し制御不能に陥る。絶望的な状況下、セイヤの指揮のもと全員が総力戦で不時着に挑む。白銀の大地が迫る中、凄まじい衝撃と共にシャトルは雪原へと激突。一行の運命は…
第1章「遭難」
そして、静寂が訪れた。耳を劈くような轟音は消え失せ、機内には不気味なほどの静けさが漂う。誰も動かない。いや、動くことすら忘れたかのように、全員がその場に硬直していた。ただ、ひび割れた窓の外で吹き荒れる、風の音だけが虚しく響いている。ゴォォォォォ……。
数秒の沈黙が流れた。リュウジが恐る恐る顔を上げ、掠れた声で漏らした。
「……生きてる、のか?」
「生存を確認」
クロが無機質な、しかしどこか安堵を含んだ声で応じる。ポックスもまた、衝撃で歪んだ眼鏡を直しながらゆっくりと体を起こした。
「負傷者は……? 動ける者は返事をしてください」
セイヤは深く、溜まっていた熱を吐き出すように息をついた。
「よくやった。全員、無事か?」
「……ああ、全員無事だ」
ギルが巨体を揺らし、無骨な手で座席の安全バーを押し上げた。その傍らで、カズマが愛機を抱え上げ、レンズの無事を確認して安堵の息を漏らした。
「カメラも無事だ。奇跡的にな」
「お前、こんな時までそればっかりかよ!」
リュウジが呆れたように突っ込みを入れる。だが、その軽口も長くは続かなかった。通信コンソールを確認していたポックスの表情が、一瞬にして曇ったからだ。
「……まずいことになりましたね」
クロも確認する。
クロがコンソールを叩き、被害状況を矢継ぎ早に読み上げた。
「長距離通信装置、故障。予備通信機も損傷しています」
再び、重苦しい沈黙が機内を支配した。窓の外では、叩きつけるような吹雪が不気味な音を立てている。
ポックスは静かに、しかし冷徹な事実として結論を告げた。
「……コスモ・アカデミア号と連絡が取れません」
セイヤが鋭い視線を向けた。
「救難信号は?」
ポックスは力なく首を振る。
「出せません。アンテナが完全に沈黙しています」
リュウジが喉を鳴らし、震える声で確認した。
「……つまり、どういうことだ?」
ギルが重々しく、その一言を口にした。
「……遭難だ」
「はい。我々は現在、遭難状態にあります」
クロの無機質な宣告が、冷え切った機内に虚しく響いた。
そして、追い打ちをかけるようにクロがモニターへ現在の状況を表示した。 『外気温:マイナス三十七度』
その非情な数字に、全員の動きが止まった。
「終わったぁぁぁ!!」
リュウジの絶望に満ちた叫びが、冷え切った機内に虚しく響き渡った。
だが、セイヤだけは力強く立ち上がった。
ひび割れた窓の外を見つめる。そこにあるのは、荒れ狂う吹雪と、どこまでも続く白銀の雪原。生命を拒絶する極寒の世界だ。それでも、彼の瞳に宿る意志の火は消えていなかった。
「まだ終わっていない」
「墜落直前、ビーコンを射出しておいた。捜索隊がそれを発見しさえすれば、我々の位置は割り出せるはずだ」
静かだが確信に満ちたその一言に、全員が弾かれたように顔を上げた。
「セイヤ、やるじゃねえか!」
リュウジが顔を輝かせ、快哉を叫んだ。
しかし、ポックスは手元の端末のノイズ混じりの画面を凝視したまま、厳しい表情を崩さなかった。
「……楽観はできません。先ほどの磁気嵐の影響が残っています。ビーコンの信号を見つけられない可能性があります」
「なんだよ、せっかく希望が見えたってのに……」
リュウジの顔が再び強張る。ポックスは眉間を押さえて、冷徹な事実を付け加えた。
「救助が来る保証はありません。それに、この吹雪です。機内の暖房が止まれば、我々の体温が尽きるのが先か、救助が来るのが先か……時間との勝負になります」
セイヤは仲間の不安を汲み取りつつも、毅然とした態度で全員を振り返った。
「それでも、座して死を待つわけにはいかない。全員、状況確認だ。クロ、シャトル周辺をスキャンしろ。生き残るための手段を探すぞ」
絶望の淵で、若きリーダーの号令が響く。
こうして、極寒の惑星フロストガルドにおける、六人の過酷な遭難生活が幕を開けた。
次章に続く

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