宇宙生徒会長セイヤ 第70話②前編「セイヤ遭難する」

2.宇宙生徒会長セイヤ

登場人物紹介
■ セイヤ  風紀を愛する生徒会長。今日も正論で突っ走る。
■ ポックス 冷静沈着な副会長。論理を愛するバルタン星人。
■ クロ   感情を得ようとする推定10億歳のアンドロイド。
■ リュウジ 頼れる幼馴染。仲間思いの生徒会メンバー。
■ ギル   岩石星人の風紀委員。見た目は怖いが五つ子の父親。
■ カズマ  新聞部の特ダネ記者。艦内の噂話ならお任せ。

前回のあらすじ
惑星フロストガルドに不時着した生徒会一行は、全員無事だったものの、通信機が故障し救難信号も出せない遭難状態に陥る。外気温マイナス37度の極寒の中、ビーコンに望みを託すが、救助の保証はない。絶望が広がる中、リーダーのセイヤは生き残るために立ち上がり、過酷なサバイバル生活が幕を開ける。

第2章「落ち着け―」

 シャトルの外では、猛烈な吹雪が獣の咆哮のように唸りを上げていた。
「ゴォォォォォ……」
叩きつけられる雪と氷の礫が、不気味なほど規則正しいリズムで外壁を打ち鳴らす。その乾いた音は、まるで死神が刻む秒読みのようにも聞こえた。時折、船体全体が「ギギッ……」と悲鳴のような軋み声を上げる。極低温に晒された金属が収縮し、限界を訴えているのだ。遭難。逃れようのない現実を突きつけられた六人だったが、いつまでも絶望の淵に沈んでいるわけにはいかなかった。セイヤがブリッジの中央へと歩み出た。
「まず、現状を整理する」
その凛とした声に、全員の視線が集まる。
「慌てても仕方ない。今の状況で何ができて、何ができないのかを確認するぞ」
ポックスが冷静に頷いた。
「賛成です」
クロも即座にコンソールへと指を走らせる。
「機体診断を開始します」
リュウジは機関室との通信回線を確認し、短く応じた。
「こっちは生きてるな」
ギルは壊れた壁面パネルを巨体で押さえつけながら、鋭い視線で周囲を見回した。
「……とりあえず、すぐには崩れん。だが、長くはもたん」
その横で、カズマが静かにカメラを構えた。カシャッ、と乾いたシャッター音が響く。
「お前、こんな時までまだ撮ってんのか」
リュウジが呆れたように振り向くと、カズマはモニターを確認しながら淡々と答えた。
「遭難二日目の記事に使うんだよ。貴重な資料だ」
「縁起でもねぇこと言うな!二日目を前提にすんなよ」
クロが機体診断の結果をメインモニターに投影した。空中に浮かび上がったホログラム画面には、絶望を象徴するかのように赤色の警告文字が羅列される。
【主通信機:故障】
【予備通信機:故障】
【推進器:使用不能】
【補助翼:大破】
【長距離航行:不可能】
「……飛べねぇな」
リュウジが苦々しく顔をしかめた。
「はい。この損傷状況では、現場での修理は不可能です」
ポックスも沈痛な面持ちで頷く。セイヤは重苦しい沈黙を破るように腕を組んだ。
「救難信号も無理か」
「無理です」
クロが感情の起伏を感じさせない声で即答した。
「現在、我々は完全に孤立しています」
「あー……聞きたくねぇなぁ、その言葉」
リュウジが頭を抱え、深く椅子に沈み込む。しかし、クロは淡々とコンソールを叩き続けた。
「ですが、良い報告もあります」
その言葉に、絶望に沈みかけていた全員が弾かれたように顔を上げた。
「補助電源は生存しています」
ホログラムに新しい数値が表示された。
【補助電源残量:68%】
「おっ、意外とあるな」リュウジが少しだけ表情を明るくした。
「思ったより残っていますね。これなら……」ポックスも眉間を押さえて、希望を見出す。
「どの程度もつ?」
セイヤの問いに、クロは即座に計算を開始した。数秒後、無機質な電子音と共に結果が更新される。
【照明・生命維持のみ】稼働可能時間:約12日
「おお……!」
ブリッジに安堵の溜息が漏れた。十日以上もつのであれば、救助を待つ時間は十分にあるはずだ。しかし、クロが非情な追記を表示した。
【暖房稼働時】稼働可能時間:約48時間
その場にいた全員の動きが止まった。
「短っ!!」リュウジが叫ぶような声を上げる。
ポックスも険しい表情で眉をひそめた。
「予想以上の消費効率の悪さですね……」
「現在、外気温はマイナス37度。機体各所の亀裂から熱が逃げており、暖房負荷が極限まで高まっているためです」
クロは淡々と、しかし残酷な事実を突きつけた。
「夜はどうなる?」
セイヤが低く問いかける。ポックスが手元の操作端末、アナライザー・パッドを素早く操作した。
「気象予測を表示します」
ホログラムに新たなデータが展開される。
【現在:昼】外気温-37℃
【夜間予測】外気温-54℃
「さらに下がるのかよ!」リュウジが悲鳴に近い声を上げた。
「……死ぬな」ギルが短く、重々しく呟く。
「はい。生存確率は著しく低下します」クロが淡々と肯定すると、全員が声を揃えて突っ込んだ。
「軽く言うな!」
カズマが不敵に笑い、手帳にペンを走らせる。
「記事タイトルが決まったな。『全滅まであと四十八時間。極寒の惑星に消える生徒会の最期』……」
「書くな!縁起でもねぇ!」 リュウジが即座に怒鳴り声を上げた。
騒がしくなったブリッジに、セイヤの鋭い一喝が響く。
「静かにしろ!……騒いでもエネルギーを浪費するだけだ」
セイヤは一度目を閉じ、深く息を吐き出した。
「四十八時間あれば、まだやれることはある。絶望するのは、あらゆる手を尽くしてからだ」
その言葉に、場を支配していた浮ついたパニックが収まり、重い静寂が戻る。セイヤは全員の顔を見渡すと、覚悟を決めたように頷いた。

(次章へ続く)❄️🔥🚀

コメント

タイトルとURLをコピーしました