宇宙生徒会長セイヤ 第70話②後編「セイヤ遭難する」

2.宇宙生徒会長セイヤ

登場人物紹介
■ セイヤ  風紀を愛する生徒会長。今日も正論で突っ走る。
■ ポックス 冷静沈着な副会長。論理を愛するバルタン星人。
■ クロ   感情を得ようとする推定10億歳のアンドロイド。
■ リュウジ 頼れる幼馴染。仲間思いの生徒会メンバー。
■ ギル   岩石星人の風紀委員。見た目は怖いが五つ子の父親。
■ カズマ  新聞部の特ダネ記者。艦内の噂話ならお任せ。

前回のあらすじ
惑星フロストガルドに不時着した生徒会一行。極寒の外気温と機体の損傷により、暖房を維持できる時間は残り48時間と判明する。絶望的な数値に動揺し、騒ぎ出すメンバーたち。しかし、リーダーのセイヤは鋭い一喝で場を鎮め、限られた時間の中で生存への道を模索し始める。極限状態でのサバイバルが幕を開けた。

第2章「落ち着け―」

セイヤは重いため息をつき、話題を切り替える。
「……食料はどうなっている」
クロが再びホログラムを表示した。
【非常食・飲料水・保存食】総合計算の結果、非情な数字が浮かび上がる。【六名で約四日分】
「節約すれば五日はもつでしょう」
ポックスが補足するが、ギルが備蓄の少なさに岩の眉をひそめ、低く呟いた。
「……厳しいな。うちの五つ子なら一食分だ」
「マジかよ、岩石星人の食欲……」
リュウジが引き気味に呟く中、セイヤは静かに現状を整理し始めた。セイヤが現状を総括するように指を一本ずつ折った。
「つまり、食料は四日。暖房は二日。そして救助はいつ来るか不明、ということか」
絶望的な数字が並ぶ中、ポックスが眼鏡の奥の瞳を光らせて補足した。
「……ですが、希望はあります」
その言葉に、全員の視線が彼に集中する。
「墜落直前に射出したビーコンです」
ポックスがコンソールを操作すると、ホログラムに光り輝く軌道図が表示された。
「正常に動作していれば、三日以内に捜索隊が発見する可能性があります」
「助かるじゃねぇか!」
リュウジがパッと表情を明るくした。しかし、クロが水を差すように口を開く。
「保証はありません」
「今それ言います?」
ポックスが呆れたように肩をすくめるが、クロは表情を変えずに応じた。「事実です」
「こういう時だけ正直なんだよな……」
リュウジはがっくりと肩を落とした。
 吹雪はさらに強くなっていた。窓の外は完全な白に染まり、もはや何も見えない。セイヤは静かに窓を見つめた。
「外へ出るべきか?」
吐く息が白く混じり始めている。断熱材が損傷しているのか、機体内の温度は刻一刻と下がっていた。ふと触れた金属製の計器盤から、刺すような冷気が指先を貫く。まるで氷の刃を押し当てられたかのような鋭い痛みに、セイヤは思わず眉をひそめた。ポックスが即答した。
「現時点では反対です。風雪を防げるこの機体が、今は最も安全と言えます」
クロも無機質に頷く。
「同意します。少なくとも今日は船内待機が最善の選択です」
二人の意見を聞き、セイヤは短く決断を下した。
「よし。今日はここを拠点とする」
その言葉に、全員が力強く頷いた。その時だった。クロが突然、コンソールを叩く手を止めた。
「待ってください」
その無機質な声に、全員が弾かれたように振り向く。クロはモニターを凝視したまま、再び周辺スキャンのプロセスを実行していた。
「どうした?」
セイヤが歩み寄り、クロの肩越しに画面を覗き込んだ。クロはモニターを凝視したまま、感情を排した声で告げた。
「北西方向、約三・二キロ地点です」
その言葉に、ポックスが身を乗り出して画面を覗き込む。
「何か見つかりましたか?」
クロは無言でコンソールを叩き、特定の座標を拡大表示させた。そこには、小さな赤い反応が点滅していた。
【熱源反応確認】
【地熱活動推定】
「地熱?」
リュウジが怪訝そうに声を上げる。ポックスは目を細めた。
「洞窟の可能性がありますね」
クロが短く頷き、計算結果を補足した。
「居住可能空間である確率、六十七パーセント」
その数字を聞き、ギルが重々しく呟く。
「……希望か」
セイヤは腕を組み、数秒の間、沈黙を守った。そして、決然とした面持ちで告げる。
「明日の朝、調査を開始する」
その言葉に、リュウジが相好を崩した。
「へへっ、なんか助かりそうな気がしてきたな」
「楽観視するのはまだ早いです
」ポックスが冷静に釘を刺すと、クロも淡々と追従した。
「はい。不確定要素が多すぎます」
「お前ら、もう少し希望を持てよ!」
リュウジの抗議が、冷え切ったブリッジに少しだけ熱を灯した。
 その夜、六人は壊れたシャトルの中で交代制の見張りを決めた。吹雪は相変わらず荒れ狂っている。だが、彼らの心境は数時間前とは違っていた。地熱反応。それは極寒の惑星で見出した、小さくも確かな希望だった。クロは最後にモニターを見つめる。
【地熱反応継続確認】
【居住可能性:67%】
その無機質な数字を瞳に映し、アンドロイドは小さく呟いた。
「……興味深い」
吹雪の夜は長かった。だが、六人の瞳から光が消えることはなかった。

次章に続く

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