第4章「風紀相談会」
翌日の昼休み。食堂では、なぜかセイヤの周囲だけ妙な人だかりができていた。
セイヤ本人は味噌汁を飲んでいる。
「……なんだこの状況は」
リュウジが呆れた顔で言う。
「お前の恋愛相談所だとよ」
セイヤは首を傾げた。
「そんなものを開設した覚えはない」
その時だった。一人の女子生徒が恐る恐る手を挙げる。
「あ、あの……セイヤ会長」
セイヤは顔を向ける。
「なんだ?」
女子生徒は顔を赤くしている。
「好きな人と話すと緊張するんです……」
数秒沈黙。
セイヤは真剣に考え込む。そして
「まず挨拶だ」
女子生徒。
「……へ?」
セイヤは続けた。
「挨拶は重要だ」
「関係構築の基本でもある」
女子生徒達。
「おぉー……」
リュウジが吹き出す。
「なんでそれで感動してんだよ!」
別の女子生徒が手を挙げる。
「好きな人へどうやって気持ちを伝えれば……」
セイヤは即答した。
「誠実であるべきだ」
女子達。
「きゃー!」
リュウジが机を叩く。
「だからなんで盛り上がるんだよ!!」
エミリアは頭を抱えていた。
「なんで人気出るのよ……」
ミリィは爆笑している。
「あはははっ!もう完全に恋愛先生じゃん!」
ヴァルも静かに微笑んでいた。
「……向いてるのかも」
その後も相談は続いた。
「告白する勇気が出ません……」
「逃げるな」
「ケンカしてしまいました……」
「相手の話を聞け」
「どうしたら好かれますか?」
「誠実であるべきだ」
女子達感動。
リュウジ困惑。
「なんでお前の精神論で成立してんだよ……」
クロは静かにアナライザー・パッドへ入力していた。
【恋愛相談件数:増加中】
【セイヤ回答:精神論率92%】
ポックスが呟く。
「偏っていますね」
リュウジが即答する。
「でも妙に刺さってんだよ!」
そしてついに。相談待ちの列が食堂入口まで伸び始めた。
セイヤはさすがに困惑する。
「……多すぎるな」
リュウジがパンをかじりながら言う。
「お前が恋愛神社化してんだよ」
セイヤクロを見て手招きする。
「クロ」
クロがセイヤの隣に立つ。
「はい」
「手伝え」
リュウジが笑いながら言う。
「増やすな!!」
クロは静かにセイヤの隣に席をつくる。そして女子生徒の列に向かって言った。
「次の方どうぞ」
女子生徒は少し緊張している。
「好きな人の前だと変になるんです……」
クロは即答した。
「演算異常です」
女子生徒。「え?」
リュウジ、机へ突っ伏す。
「ダメだこいつ!」
クロは少し考え込む。そして静かに続けた。
「ですが」
「その相手を特別視している証拠です」
「おぉー……!」リュウジが顔を上げる。
「なんかそれっぽい!?」
クロはさらに続けた。
「感情とは、論理だけでは制御できない現象です」
エミリアが少しだけ反応する。
ポックスは静かにクロを見ていた。
クロは、エモーションチップ稼働時の記録データを参照していた。
ミリィとの時間。
失恋。
笑った記憶。
それらを元に、少しずつ言葉を組み立てている。
「相手を特別な存在と認識する事」
「それが恋愛の特徴です」
女子達は真剣に聞いていた。
リュウジが小声で言う。
「なんか普通にそれっぽくなってきてねぇ?」
ヴァルも小さく頷く。
「……ちゃんと経験してるから」
クロは静かに頷いた。
「はい」
そして数十分後。クロはなぜかどんどん得意げになっていた。
「恋愛とは、心のワープ現象です」
リュウジが笑う。
「急にポエム化すんな!」
ミリィ爆笑。
「あははははっ!!」
クロはどや顔で言う。
「今、上手い事を言いました」
ポックスが静かに目を閉じる。
「否定はできません」
リュウジ。「ポックス!否定しろ!!」
相談列はさらに増えていく。
セイヤは困っていた。
「……処理しきれん」
クロも冷静だった。
「相談効率が限界値を超えています」
リュウジが叫ぶ。「なんで恋愛相談をシステム負荷みてぇに言うんだよ!!」
食堂入口まで伸びる相談列。
その光景を見ながら、エミリアは深いため息を吐いた。
「……、私も手伝うわ」
リュウジ停止。「えっ!?参戦すんの……」

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