宇宙生徒会長セイヤ 第67話②「ポックス、バグる」

2.宇宙生徒会長セイヤ

第2章「異常発生」  


今日はいつもより少しだけおしゃれをしている。柔らかな白系の上着に、丁寧に整えられた髪。普段の穏やかな雰囲気はそのままに、どこか特別感があった。ヴァルは少し照れたように視線を逸らし、小さく尋ねる。
「……変じゃない?」

少し離れたところに隠れていた『ガヤ3人組』のリュウジが小さく呟く。
「……あっ」

ミリィもニヤリと笑う。
「来る」

クロだけが冷静だった。
「来ますね」

数秒の沈黙の後、ポックスはヴァルを見つめたまま固まっている。
思考処理が明らかに追いついていなかった。
そして次の瞬間、スッ――。
ポックス、無意識に敬礼。

ヴァルが思わず吹き出す。
「……フフッ、また敬礼してる」

ミリィ、腹を抱えて崩壊。
「あははははっ!!」
リュウジも肩を震わせる。
「だろうな!!」
クロは静かにアナライザー・パッドへ入力した。
【ポックス:好意表現行動確認】

ポックス本人だけは至って真剣だった。
「……非常に良いと思います」
ポックスが真面目にそう告げると、ヴァルは少し嬉しそうに、そして少し照れたように笑った。
「……ありがと」

後方でアナライザー・パッドを操作していたクロが静かに報告する。
「ポックスの呼吸が先ほどから停止しているようです」

リュウジ。「……は?」ミリィ。「えっ」

ポックスの顔色がみるみる青ざめていく。
ヴァルが不思議そうに首を傾げた。
「……ポックス?」

その声で、ようやくポックスは我に返る。
「スゥゥゥゥーーーーッ!!」

ものすごい勢いで酸素を吸い込む。
「はぁ……はぁ……も、問題ありません……」
「つい、呼吸を忘れていました」

リュウジとミリィ、同時に地面へ突っ伏す。
「ぶっ……!!」
「あはははははっ!!」

笑いを堪えきれない。
クロは冷静にアナライザー・パッドを確認していた。

「呼吸、正常値へ復帰しました」

リュウジは涙を拭きながら言う。
「頼むから今後も生体チェックしてくれ……」
「ポックスが窒息しないように……っ!」

ミリィも床を叩きながら笑っている。
「見とれて酸欠になる人初めて見たぁぁ!!」

その横でヴァルだけが本気で心配そうだった。
「……ほんとに大丈夫?」
ポックスはまだ少し青い顔のまま、静かに頷いた。
「……問題ありません」

しかしその声には、まったく説得力が無かった。
ヴァルが「本当に?」と、さらに顔を近づけてポックスの顔を覗き込む。
「顔、まだ赤いよ?」
至近距離で潤んだ瞳に見つめられ、ポックスの思考回路が焼き切れるような音を立てた。
ポックス、完全停止。

数秒経過。

さらに数秒。

ポックス、今度は瞬きを忘れる。
クロが静かにアナライザー・パッドを確認していた。
【瞬目停止:1分経過】

ミリィ、肩を震わせる。「ダウン寸前だわ」
リュウジ。「ダメだ。タオルを投げてやらないと」

しかしポックス本人は完全停止したままだった。
やがて、目がどんどん充血していく。
そして――じわっ。目から涙が流れ始めた。

ヴァルが本気で慌てる。
「……どうしたの!?」
「ポックス、泣いてる?」

ポックスは真顔のまま答えた。
「違います」
「瞬きをしていないだけです」

クロが淡々と追記する。
【瞬目停止:3分経過】

リュウジ、ついに壁を叩いて崩壊。
「見とれてドライアイ起こすなぁぁ!!」
ミリィも笑いすぎてしゃがみ込んでいた。
「あははははっ!!」

ポックスは静かにアナライザー・パッドを取り出す。
そして極めて真剣な表情で入力した。
【重大な異常を確認】

その横で、ヴァルだけが小さく首を傾げていた。
「……?」


次章に続く

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