第5章「居酒屋クロ」
数日後。放課後の生徒会室でクロが静かにアナライザー・パッドを操作していた。
「本日20時。指定座標へ集合してください」
リュウジが顔を上げる。
「なんだ急に」
ミリィも不思議そうに首を傾げる。
「またなんか始めた?」
クロ。「来れば分かります」
エミリア。「嫌な予感しかしないんだけど」
ポックスは静かに頷く。
「同感です」
セイヤだけは真顔だった。
「分かった」
リュウジ。「お前はもう少し警戒しろ」
そして夜、商業ブロック裏路地。普段あまり人の通らない細い通路を、セイヤ達は歩いていた。
「こんな場所あったんだな」
リュウジが周囲を見回す。ミリィは少しわくわくしていた。
「秘密基地っぽい!」
その時だった。ヴァルが小さく指を差す。
「……あそこ」
全員の視線の先。赤提灯。小さな木の看板。そして暖簾。そこには達筆な文字で書かれていた。
『居酒屋クロ』
リュウジ。「マジで店作ったぁぁ!!」
ミリィ、爆笑。「あははははっ!!!」
エミリアは頭を抱えている。
「行動力がおかしいのよ……」
セイヤは真顔で暖簾を見る。
「居酒屋か」
ポックス。
「開店してしまいましたか……」
恐る恐る暖簾をくぐる。
すると次の瞬間。ガラッ!!
「いらっしゃい!!」
そこにいたのは、はっぴ姿にハチマキを巻いたクロだった。
しかも妙に似合っている。
リュウジ崩壊。「誰だお前!!」
ミリィは腹を抱えて笑っていた。
「あははははっ!!似合ってるー!!」
クロは威勢よくカウンターへ立つ。
「本日のおすすめは、愛情120%チャーハンと愛情シミシミおでんです」
リュウジ。
「おっ!20%増量してんじゃん!!」
ミリィ。「おでん美味しそう!」
店内は思ったより落ち着いた空間だった。
木目調のカウンター。小さな座敷。柔らかい照明。奥からは出汁の良い香りがする。
ヴァルは店内を見回して小さく笑った。
「……なんか落ち着く」
エミリアも少し驚いている。
「……ちゃんとしてるわ」
クロ。「内装設計、導線設計、音響環境を最適化しました」
リュウジ。「急に現実的な説明すんな!」
その時。厨房から湯気が立ち上る。カンカンカン!!クロ、中華鍋を振り始める。
動きが完全に料理人だった。
セイヤは静かに頷く。
「似合っているな」
クロ。
「ありがとうございます」
数分後。料理が並ぶ。焼き鳥。餃子。チャーハン。
それにおでんまである。
ミリィが目を輝かせる。
「えっ、普通に居酒屋じゃん!」
ポックスは料理を一口食べ、静かに頷いた。
「……非常に美味です」
ヴァルも微笑む。
「……このおでん、あったかい味する」
クロは静かにみんなを見ていた。笑い声。料理の湯気。賑やかな空気。銀河飯店で見てきた光景に少し似ていた。
エミリアはカウンターへ肘をついて言う。
「ここ、居心地いいわね」
リュウジも頷く。
「なんか帰ってきたくなる感じあるな」
セイヤは真顔で店内を見回す。
「良い店だ」
クロ小さく頷く。
「……ありがとうございます」
その時だった。ガラッ。店の扉が開く。
「お、開いてんじゃねぇか」
全員振り向く。そこに立っていたのはダンさんだった。
クロ「……ダンさん」
ダンさんは店内を見回し、小さく笑った。
「なんだよ」
「ちゃんと店になってるじゃねぇか」
リュウジが吹き出す。
「弟子の店見に来たのかよ」
ダンさんはカウンターへ座る。
「炒飯一つ」
クロ。「はいよ」
数分後。クロは静かに炒飯を差し出した。
「愛情120%チャーハンです」
ダンさん、一口食べる。数秒沈黙。全員見守る。そして。ダンさんは小さく笑った。
「……ちゃんと“美味しく食ってほしい”味になってるじゃねぇか」
クロ静かに頷く。
「……はい」
夜の裏路地。赤提灯が静かに揺れていた。
『居酒屋クロ』
そこはいつの間にか、セイヤ達の新しい居場所になり始めていた。


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