宇宙生徒会長セイヤ 第68話⑤「クロアルバイトをする」

2.宇宙生徒会長セイヤ

第5章「居酒屋クロ」 

数日後。放課後の生徒会室でクロが静かにアナライザー・パッドを操作していた。
「本日20時。指定座標へ集合してください」
リュウジが顔を上げる。
「なんだ急に」
ミリィも不思議そうに首を傾げる。
「またなんか始めた?」
クロ。「来れば分かります」
エミリア。「嫌な予感しかしないんだけど」
ポックスは静かに頷く。
「同感です」
セイヤだけは真顔だった。
「分かった」
リュウジ。「お前はもう少し警戒しろ」
そして夜、商業ブロック裏路地。普段あまり人の通らない細い通路を、セイヤ達は歩いていた。
「こんな場所あったんだな」
リュウジが周囲を見回す。ミリィは少しわくわくしていた。
「秘密基地っぽい!」
その時だった。ヴァルが小さく指を差す。
「……あそこ」
全員の視線の先。赤提灯。小さな木の看板。そして暖簾。そこには達筆な文字で書かれていた。
『居酒屋クロ』
リュウジ。「マジで店作ったぁぁ!!」
ミリィ、爆笑。「あははははっ!!!」
エミリアは頭を抱えている。
「行動力がおかしいのよ……」
セイヤは真顔で暖簾を見る。
「居酒屋か」
ポックス。
「開店してしまいましたか……」
恐る恐る暖簾をくぐる。
すると次の瞬間。ガラッ!!
「いらっしゃい!!」
そこにいたのは、はっぴ姿にハチマキを巻いたクロだった。
しかも妙に似合っている。
リュウジ崩壊。「誰だお前!!」
ミリィは腹を抱えて笑っていた。
「あははははっ!!似合ってるー!!」
クロは威勢よくカウンターへ立つ。
「本日のおすすめは、愛情120%チャーハンと愛情シミシミおでんです」
リュウジ。
「おっ!20%増量してんじゃん!!」
ミリィ。「おでん美味しそう!」
店内は思ったより落ち着いた空間だった。
木目調のカウンター。小さな座敷。柔らかい照明。奥からは出汁の良い香りがする。
ヴァルは店内を見回して小さく笑った。
「……なんか落ち着く」
エミリアも少し驚いている。
「……ちゃんとしてるわ」
クロ。「内装設計、導線設計、音響環境を最適化しました」
リュウジ。「急に現実的な説明すんな!」
その時。厨房から湯気が立ち上る。カンカンカン!!クロ、中華鍋を振り始める。
動きが完全に料理人だった。
セイヤは静かに頷く。
「似合っているな」
クロ。
「ありがとうございます」
数分後。料理が並ぶ。焼き鳥。餃子。チャーハン。
それにおでんまである。
ミリィが目を輝かせる。
「えっ、普通に居酒屋じゃん!」
ポックスは料理を一口食べ、静かに頷いた。
「……非常に美味です」
ヴァルも微笑む。
「……このおでん、あったかい味する」
クロは静かにみんなを見ていた。笑い声。料理の湯気。賑やかな空気。銀河飯店で見てきた光景に少し似ていた。
エミリアはカウンターへ肘をついて言う。
「ここ、居心地いいわね」
リュウジも頷く。
「なんか帰ってきたくなる感じあるな」
セイヤは真顔で店内を見回す。
「良い店だ」
クロ小さく頷く。
「……ありがとうございます」
その時だった。ガラッ。店の扉が開く。
「お、開いてんじゃねぇか」
全員振り向く。そこに立っていたのはダンさんだった。
クロ「……ダンさん」
ダンさんは店内を見回し、小さく笑った。
「なんだよ」
「ちゃんと店になってるじゃねぇか」
リュウジが吹き出す。
「弟子の店見に来たのかよ」
ダンさんはカウンターへ座る。
「炒飯一つ」
クロ。「はいよ」
数分後。クロは静かに炒飯を差し出した。
「愛情120%チャーハンです」
ダンさん、一口食べる。数秒沈黙。全員見守る。そして。ダンさんは小さく笑った。
「……ちゃんと“美味しく食ってほしい”味になってるじゃねぇか」
クロ静かに頷く。
「……はい」
夜の裏路地。赤提灯が静かに揺れていた。
『居酒屋クロ』
そこはいつの間にか、セイヤ達の新しい居場所になり始めていた。

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