宇宙生徒会長セイヤ 第70話 ⑥後編「セイヤ、遭難する」

2.宇宙生徒会長セイヤ

登場人物紹介
■ セイヤ  風紀を愛する生徒会長。今日も正論で突っ走る。
■ ポックス 冷静沈着な副会長。論理を愛するバルタン星人。
■ クロ   感情を得ようとする推定10億歳のアンドロイド。
■ リュウジ 頼れる幼馴染。仲間思いの生徒会メンバー。
■ ギル   岩石星人の風紀委員。見た目は怖いが五つ子の父親。
■ カズマ  新聞部の特ダネ記者。艦内の噂話ならお任せ。
■ エミリア 生徒会書記。優秀な参謀役でセイヤの彼女。ミリィの姉(双子)
■ ミリィ  明るく元気な医療部志望。リュウジの彼女。エミリアの妹(双子)
■ ヴァル  穏やかな流体生命体。優しさ溢れる癒やし担当。
■ハンク艦長  コスモ・アカデミア号艦長。豪快な性格。
■ポックル副長 コスモ・アカデミア号副長。冷静沈着。ポックスの父親。
■セイゴ    コスモ・アカデミア号操舵士。誠実な性格。セイヤの父。
■リュウジロウ コスモ・アカデミア号機関主任。リュウジの父。

前回のあらすじ
極寒の惑星で「ビーチ計画」を進めるセイヤ達。一方、母船では回収されたビーコンの音声ログから事故の凄惨さを知り絶望が広がるが、ヴァルは悲しみをこらえ解析を続行。混乱の中でポックスが残した冷静な計算ログを発見し、ついに墜落地点を特定する。希望を取り戻した捜索隊は、救出に向け直ちに行動を開始する。

第6章「捜索隊」後編 

 一方その頃。遭難しているはずのセイヤたちは、洞窟の奥で巨大な設計図を広げていた。
「次はサウナだ。その隣に水風呂、さらに養殖用の生簀を配置する。そして……その先に広がるのがビーチだ」
セイヤが指し示した図面を、ポックスが冷静に検分する。
「理論上、可能です」
「実行可能です」
クロも無機質に、しかし力強く同意した。
「お前ら、いい加減にしろ!何なんだよ、そのやる気は!!」
一人まともな感覚を保っているリュウジの絶叫が、洞窟の壁に虚しく反響した。

 その日の夜。コスモ・アカデミア号のノースゲート格納庫には、かつてない緊張感と高揚感が渦巻いていた。眩い照明に照らされた発着デッキの中央では、救助任務のために整備された大型シャトルが、静かにその巨体を横たえている。ハッチの前には、エミリア、ミリィ、ヴァル、そして精鋭の救助スタッフたちが集結していた。全員がそれぞれの決意を胸に、過酷な環境に耐えうる防寒装備に身を包んでいる。搭乗の合図が鳴り響き、一人、また一人と機内へ吸い込まれていく。
最後に乗り込もうとしたエミリアたちの背中に、ハンク艦長の重厚な声が飛んだ。
「必ず、全員を連れて帰ってこい」
その短い言葉には、艦長としての命令以上の、父のような祈りが込められていた。
「了解!」
エミリアは力強く応え、迷いのない足取りで機内へと足を踏み入れた。やがて、轟音とともにシャトルのエンジンが点火される。青白い噴射炎を残し、救助隊を乗せた機体は暗黒の宇宙へと力強く飛び出していった。

一方、極寒の惑星フロストガルドに築かれた「秘密基地」では、さらなる進化が止まらなかった。洞窟の奥、即席の管制デスクに向かっていたクロが、無機質な手つきでログを更新する。端末の画面には、遭難者たちのものとは思えない項目が次々と並んでいった。
【風力発電:稼働開始】
【養殖設備:建設予定】
【サウナ:設計完了】
【ビーチ計画:承認】
【秘密基地完成率:九十三パーセント】
その数値を肩越しに覗き込んだリュウジが、引きつった笑いを浮かべて呟く。
「おい……これ、救助が来る前に完成しちまうぞ」
だが、その懸念を耳にしたセイヤは、至って真面目な顔で言い放った。
「急げ。時間は有限だ」
「了解です」
ポックスが即座に頷き、クロも淡々と応じる。
「了解」
ギルが重厚な声で続き、カズマもまた、手帳にペンを走らせながらニヤリと笑った。
「了解だ。これは最高の記事のネタになるな」
「だから、なんで全員そんなにやる気なんだよ!!」
リュウジの絶叫が、温かくなり始めた洞窟内に虚しく響き渡った。彼らの賑やかな笑い声は、吹き荒れる雪嵐の音にかき消されていく。
だが、その上空――分厚い雲の向こう側からは、彼らを探し続ける救助隊の光が、確実にその座標へと近づいていた。

(第7章へ続く)❄️🚀📡♨️

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