第4章「店主の本音」
クロが銀河飯店で働き始めてから数週間後。店は以前とは別物になっていた。
「クロくん!愛情100%チャーハン一つ!」
「はい」
「こっち会計!」
「確認しました」
店内は常に満席。店の外には行列まで出来ている。商業ブロックでも話題になっていた。
【無表情店員のいる街中華】――銀河飯店。
クロは今日も厨房とホールを完全同時進行していた。中華鍋を振りながらレジを打ち、注文を聞きながら餃子を焼いている。ダンさんはカウンター奥で腕を組みながら呟いた。
「……なんでこうなったんだよ」
リュウジは笑いながらラーメンをすすっている。
「いや、クロが原因だろ」
ミリィもニヤニヤしていた。
「大人気じゃん!」
その時、女性客が小声で言う。
「クロくん今日いる!」
「やった!」
「いらっしゃいませ」
エミリアはその様子を見ながら少し吹き出す。
「アイドルみたいになってるじゃない」
ポックスは静かに分析する。
「接客と料理技術が話題性を生み出しています」
ヴァルは周囲を見回して小さく笑う。
「……前より賑やか」
セイヤは真顔で頷いた。
「活気があるのは良い事だ」
ダンさんだけが複雑そうだった。
「俺はもっと細々やりたかったんだけどなぁ……」
クロが振り向く。
「……問題があるのですか?」
ダンさんは少し考えたあと、小さく肩をすくめた。
「いや、ありがたいんだよ?」
「売上も増えたし」
「本日の売上は通常比241%です」
「細かいなぁ……」
そして静かに店内を見回した。
笑ってる常連。
騒がしい学生達。
行列。
以前の銀河飯店には無かった光景だった。
「でもなぁ」
ダンさんは少し疲れたように笑う。
「俺は昔から、常連がふらっと来て飯食って帰るくらいの店で良かったんだよ」
「……」
ダンさんは中華鍋を見つめる。
「もう歳だしな」
「こんな行列毎日は正直きつい」
数秒静寂。クロは静かにその言葉を聞いていた。
リュウジ達も少し黙る。ダンさんは苦笑した。
「まぁ贅沢な悩みなんだけどな」
クロは静かに呟いた。
「……店の理想形が違う」
ダンさんは少し驚いたように笑う。
「そうそう」
「お前、分かるじゃねぇか」
クロは数秒考え込む。
店。料理。人が集まる場所。そこにある空気。ダンさんはクロを見ながら言った。
「でもお前なら、自分の店持てるぞ」
リュウジ。
「は?」
ミリィ。
「えっ?」
エミリアも少し驚く。
「クロが?」
ダンさんは真顔だった。
「料理出来る。接客出来る。店回せる」
「もう俺より優秀だろ」
クロ。
「……」
ダンさんは少し笑う。
「お前、人集める才能あるよ」
クロは静かに店内を見回した。楽しそうに食事する人達。笑い声。湯気。賑やかな空気。
数秒後。クロは小さく頷いた。
「……検討します」
リュウジ。
「検討すんの!?」
その夜、営業終了後にクロは一人で商業ブロック裏路地を歩いていた。
人通りの少ない細い通路。小さな空き店舗。赤提灯。
クロは静かに立ち止まる。
「……なるほど」
アナライザー・パッドへ入力。
【新規店舗運営可能性:検討開始】
クロの目の前で、夜風に古い暖簾が静かに揺れていた。

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