第3章「愛情100%チャーハン」
銀河飯店でクロが働き始めて数日後、店内は以前より明らかに忙しくなっていた。
「クロくーん!水お願い!」
「はい」
「餃子追加!」
「確認しました」
無表情のまま高速移動するクロ。その姿はもはやベテラン店員だった。
ダンさんは厨房で中華鍋を振りながら呟く。
「……かなり余裕がでてきてんだけど」
クロ。
「動線を最適化しました」
ダンさん。
「君凄いね」
その日も昼時は満席だった。クロは厨房とホールを完全同時進行している。
鍋を振りながら会計し、水を補充しながら注文を取っていた。その時だった。ダンさんがふとクロへ言った。
「クロ、お前料理は上手ぇけどよ」
「はい」
「料理ってのは、腕だけじゃねぇんだ」
クロ停止。「……?」
ダンさんは鍋を振りながら続ける。
「同じ料理でも、疲れてる時に食うのと、楽しい時に食うのじゃ全然違う」
「誰と食うかでも味は変わる」
クロは静かにその言葉を記録していた。
「感情による味覚評価変動……」
「まぁ難しく考えるな」
「“美味しく食ってほしい”って気持ちだよ」
数秒停止。クロ。「……なるほど」
その日の営業終了後。クロは厨房で一人、中華鍋を見つめていた。
「美味しく食べてほしい……」
翌日、クロは何かを研究し始めた。
味付け調整。火加減変更。油の量。卵の混ぜ方。
ダンさんが困惑する。
「……何作ってんだ?」
「感情を込めた料理を試作しています」
「ふっまあ頑張ってみろ」
数日後。セイヤ達が銀河飯店へやって来る。リュウジが席へ座る。
「今日はなんか新メニューあるらしいぞ」
ミリィがメニューを見る。
「ほんとだ!」
そこには新しい紙が貼られていた。
【クロの愛情100%チャーハン】
リュウジ。「ネーミングの圧すげー!!」
エミリアが吹き出す。
「なによそれ!」
ヴァルも肩を震わせて笑っている。
「……ふふっ」
ポックスは真顔でメニューを見つめた。
「愛情出力100%……」
セイヤは静かに頷く。
「良い心がけだ」
リュウジ。「何もんだよ、お前は!」
その時、クロが厨房から現れる。
「ご注文は?」
ミリィ即答。「愛情100%チャーハン!」
「ありがとうございます」
数分後。カンカンカンカン!!厨房から中華鍋の音が響く。クロの動きは以前より少し柔らかくなっていた。ダンさんは腕を組みながらそれを見る。
「……変わったな」
数分後、クロが料理を運んでくる。
「愛情100%チャーハンです」
「感情出力を増加しています」
リュウジ。
「だからなんだよその説明!」
全員で食べる。数秒後。ミリィ。
「……えっ!?」
エミリア。
「ちょっと待って、普通にすごく美味しいんだけど!?」
ヴァルも驚いていた。
「……なんか、前より温かい感じする」
ポックスは静かに頷く。
「味に安定感があります」
リュウジ。
「なんとなく言いたい事は分かるのが腹立つ!!」
セイヤは真顔で言う。
「うん、クロなかなかいけるよ、これ」
クロは静かにみんなを見ていた。
楽しそうに食べる。
笑っている。
会話している。
その光景を見ながら、小さく呟く。
「……料理とは」
「感情伝達媒体の一種かもしれません」
数秒静寂。ダンさんが小さく笑った。
「お前、料理好きなんだな」
クロ数秒停止、そしてクロは静かに頷いた。
「……はい」
その返事は、以前より少しだけ人間らしかった。

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