登場人物紹介
■ セイヤ 風紀を愛する生徒会長。今日も正論で突っ走る。
■ ポックス 冷静沈着な副会長。論理を愛するバルタン星人。
■ クロ 感情を得ようとする推定10億歳のアンドロイド。
■ リュウジ 頼れる幼馴染。仲間思いの生徒会メンバー。
■ ギル 岩石星人の風紀委員。見た目は怖いが五つ子の父親。
■ カズマ 新聞部の特ダネ記者。艦内の噂話ならお任せ。
前回のあらすじ
極寒の惑星フロストガルドへ資源調査に向かったセイヤら生徒会一行は、目的地目前で大規模な磁気嵐に遭遇する。激しい衝撃と機体の損傷に晒されながらも、メンバーは各々の役割を果たし、セイヤの指揮とリュウジの尽力、クロの操縦で窮地を脱する。無事に嵐を突破した一行だったが、ポックスだけは険しい表情を崩さなかった。
第1章「遭難」
「待ってください」
その鋭い声に、ブリッジの空気が再び凍りつく。クロもまた、前方のメインモニターに視線を走らせた。
「……前方に障害物群を確認」
静かな、しかし警告に満ちたクロの言葉と共に、モニターには無数の光点が映し出された。
「今度はなんだよ!」
リュウジが吐き捨てるように叫んだ。
「小惑星群です」
ポックスが冷静に、しかし切迫した声で応じる。
「嘘だろ……っ」
絶句するリュウジを余所に、クロの指がコンソールの上を舞った。
「回避行動を開始します」
直後、シャトルは重力を無視するかのような鋭さで急旋回した。
「ゴォッ!」
凄まじい風切り音と共に、窓の外を巨大な岩塊が掠めていく。
一つ、二つ、三つ――。息つく暇もなく、無数の小惑星が次々と迫りくる。
「右です!」
ポックスの鋭い指示に、クロが即座に応じた。
「回避」
「下方にも来るぞ!」
セイヤが身を乗り出し、計器の死角から迫る影を指差した。
「まだいる」 ギルが低い声で警告を発する。その視線の先には、さらに密度を増した岩塊の群れがあった。
「多すぎるだろ、これ!」
リュウジが悲鳴に近い声を上げ、操縦席の背もたれを掴んで踏ん張る。
「もうフィルムがねぇ!」 カズマは必死にシャッターを切り続けていたが、ついに絶望的な叫びを上げた。 シャトルは極限の機動で回避を続けた。そして、ついに最後の一つを避けきった。
「よっしゃあ!」
リュウジが力強く拳を握り、歓喜の声を上げた。
その瞬間だった。
ドガァァン!!
鼓膜を震わせる凄まじい衝撃がシャトルを襲った。機体全体が右へと大きく傾き、コンソールから火花が散る。直後、ブリッジには先ほどよりもさらに禍々しい、真紅の警告灯が回転し始めた。
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
絶え間なく鳴り響く緊急警報が、最悪の事態を告げていた。
「機体後部、被弾!」
クロの無機質な声が、爆音の中に響いた。
「何だと!?」
ポックスが驚愕に目を見開く。
「右補助翼、損傷。深刻なダメージです」
「マジかよ!」
リュウジが絶望的な叫びを上げた。その直後、バランスを失った機体が猛烈な勢いで回転を始めた。グルンッ! 凄まじい遠心力が襲い、全員の体が座席から浮き上がる。
「姿勢制御不能。制御を拒絶しています」
クロが必死にコンソールを叩くが、機体の暴走は止まらない。
「推進器はどうなっていますか!?」
ポックスが重力に抗いながら叫んだ。リュウジが必死にモニターを叩き、数値を読み取る。
「ダメだ! 反応しねぇ!」
「不時着できるか?」
セイヤの問いに、数秒の沈黙が流れた。クロが膨大な計算を終え、冷徹な数字を口にする。
「成功確率、三十七パーセント」
「低っ!!」
リュウジが声を張り上げた。ポックスは深く息を吐き、覚悟を決めたように眉間を指で押さえた。
「……やるしかありませんね」
セイヤが力強く頷き、全員を見渡した。
「全員協力しろ! 死なせはしない!」
「リュウジ、ビーコン射出準備! ギル、準備出来次第射出しろ!」
リュウジがレストカプセルのビーコン設定にして装填準備に取り掛かる。
「準備完了!」
「射出!」
ギルはすかさず射出した。クロは操縦桿を必死に抑え込み、ポックスは端末を叩いて突入角度を割り出す。機関室ではリュウジが火花を散らすコンソールと格闘しながら出力を調整し、ギルとカズマは機体にかかる凄まじいGに耐えながら、外れかけた機材を必死に固定した。
「全員、持ち場を死守しろ! 絶対に生きて帰るぞ!」
セイヤの怒号に近い指示が飛ぶ。全員が、一秒先の生を掴み取るために己の限界に挑んでいた。
「速度超過」
クロが警告を発する。
「左へ三度!」
ポックスの鋭い指示が飛ぶ。
「出力限界だ!」
リュウジが悲鳴を上げる機関室。
「耐えろ!」
セイヤの怒号が機内に響き渡った。
窓の外に、白銀に染まった惑星の表面が急速に迫ってきた。見渡す限りの雪原、切り立った氷河、そして視界を遮る激しい吹雪。フロストガルドの冷酷な大地が、牙を剥いて一行を待ち構えている。
「衝突まで、十秒」
クロが、死を宣告するかのような正確さでカウントダウンを開始した。
全員が息を呑んだ。
「九!」
機体が激しく揺れ、金属が軋む悲鳴を上げる。
「八!」 「七!」
リュウジが操縦席の背もたれを指が白くなるほど握りしめ、絶叫した。
「頼む、耐えてくれぇぇ!!」
「六!」 「五!」
ギルが巨体を座席に沈め、祈るように低く唸った。
「……踏ん張れ。まだだ」
「四!」 「三!」
ポックスが血走った目でモニターを凝視し、喉を枯らして叫んだ。
「角度維持! そのまま固定してください!」
「二!」 「一!」
「衝撃に備えろッ!!!」
セイヤの怒号が響き渡った直後、世界が爆発した。
ドォォォォォン!!!
鼓膜を突き破らんばかりの轟音と共に、凄まじい衝撃がシャトルを襲った。
機体は雪原へ突っ込み、そのまま何百メートルも滑走した。
ガガガガガガガガガッ!!
次章に続く

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