登場人物紹介
■ セイヤ 風紀を愛する生徒会長。今日も正論で突っ走る。
■ ポックス 冷静沈着な副会長。論理を愛するバルタン星人。
■ クロ 感情を得ようとする推定10億歳のアンドロイド。
■ リュウジ 頼れる幼馴染。仲間思いの生徒会メンバー。
■ ギル 岩石星人の風紀委員。見た目は怖いが五つ子の父親。
■ カズマ 新聞部の特ダネ記者。艦内の噂話ならお任せ。
■ エミリア 生徒会書記。優秀な参謀役でセイヤの彼女。ミリィの姉(双子)
■ ミリィ 明るく元気な医療部志望。リュウジの彼女。エミリアの妹(双子)
■ ヴァル 穏やかな流体生命体。優しさ溢れる癒やし担当。
■ハンク艦長 コスモ・アカデミア号艦長。豪快な性格。
■ポックル副長 コスモ・アカデミア号副長。冷静沈着。ポックスの父親。
■セイゴ コスモ・アカデミア号操舵士。誠実な性格。セイヤの父。
■リュウジロウ コスモ・アカデミア号機関主任。リュウジの父。
前回のあらすじ
極寒の惑星フロストガルドでセイヤたちの消息が絶たれ四日が経過。母船では生存可能時間を大幅に超過したシミュレーション結果に絶望感が漂うが、エミリアたちは彼らの生存を信じ、必死に捜索を続けていた。家族や仲間への想いを胸に、悲痛な沈黙を破って再び救出への決意を固める捜索隊。
第6章「捜索隊」中編
一方その頃。極寒の惑星フロストガルドでは、遭難したはずの一行が驚くべき光景を作り出していた。
「うおおおおお、寒ぃぃぃぃ!!」
吹き荒れる雪嵐の中、リュウジの絶叫が響き渡る。彼らが身を寄せる洞窟の外、切り立った崖の上には、いつの間にか巨大な風車がそびえ立っていた。吹き付ける強風を真っ向から受け、力強く回転している。
「ボルト固定、完了しました」
クロが吹雪の中でも乱れぬ動作で即座に応じる。その傍らで、ポックスは手元のアナライザー・パッドを鋭い眼差しで睨みながら指示を飛ばしていた。
「風向き良好。現在の出力予測なら、地熱発電の補助として十分に機能します」
「よし!」
防寒装備に身を包んだセイヤが、満足そうに深く頷いた。
「ビーチ計画に一歩近づいたな」
「遭難者が言う台詞じゃねえだろ!」
リュウジの至極真っ当なツッコミを、セイヤは真剣な眼差しで受け流した。
「いや、リュウジ。極限状態におけるメンタルケアの成否は、生存率に直結する重要なファクターだ」
セイヤは至って真面目な顔で言葉を続ける。
「人工太陽灯と砂、そして寄せては返す波の音……。この極寒の地にあって、精神を南国の楽園へと飛ばす。それこそが、俺たちの掲げる『ビーチ計画』の真髄だ」
「ただの現実逃避じゃねーか!」
その日の午後、宇宙空間を哨戒していたノースゲート隊の艦橋に、緊張の走る声が響いた。
「待ってください!」
オペレーターが鋭く声を上げ、コンソールを叩く。
「微弱な信号を確認。……これは、シャトルのものです!」
その一言で、静まり返っていた艦橋がにわかにざわつき始めた。
「座標固定!」
「解析開始!」
次々と指示が飛び交い、数秒後、メインモニターに一つの物体が映し出された。漆黒の宇宙空間を力なく漂う、小さな光の粒。それは、レストカプセルに搭載されている緊急用の小型ビーコンだった。
「発見したぞ!!」
誰からともなく歓声が上がり、絶望に沈んでいた空気が一気に歓喜へと塗り替えられた。数時間後、回収されたビーコンは直ちにコスモ・アカデミア号へと運び込まれた。
会議室には、ハンク艦長をはじめとする捜索隊の面々が再び集結していた。卓上に置かれたビーコンにはボイスレコーダーが内蔵されており、今まさにその解析データが再生されようとしていた。スピーカーからノイズ混じりの音声が流れ出す。それは、事故直前の緊迫したコックピットの記録だった。
『前方に磁気嵐を確認』無機質なクロの声が響く。
『規模は?』冷静なポックスの問いが続く。
『……巨大です。現進路での回避は困難と判断します』
その報告が流れた瞬間、会議室は水を打ったような静寂に包まれた。続いて、『最短コースで突破する!』セイヤの声だ。
その直後。激しい警報音。振動音。
『うおっ!?』
『揺れる!!』
『左へ二度修正!』混乱する音声が飛び交う。そして、追い打ちをかけるような報告が重なった。
『小惑星群です』
『嘘だろ!?』
『回避行動開始!』
凄まじい衝撃音が立て続けに響き、聴いている者たちの鼓動を跳ね上げる。『被弾!』
『補助翼損傷!』
『姿勢制御不能!』
絶望的な状況を告げる叫びが途切れた瞬間、会議室の空気は完全に凍り付いた。ミリィはあまりの生々しさに思わず口元を押さえ、ヴァルもまた、信じられないものを見るように茫然と立ち尽くす。
『ビーコン射出準備!』
『準備完了!』
『射出します!』
ギルの叫び声を最後に、音声記録は途絶えた。会議室を支配したのは、重く冷たい静寂だった。誰もが言葉を失い、ただスピーカーを見つめることしかできない。事故の凄まじさと深刻さが、今、初めて白日の下にさらされたのだ。ヴァルは呆然と立ち尽くしていたが、ふと隣で肩を震わせるミリィの姿が目に入った。その瞬間、彼女の瞳に理性の光が戻る。今は絶望している場合ではない。流体生命体特有の柔軟な思考で感情を脇に置くと、彼女は静かに、しかし確かな足取りで解析端末へと歩み寄った。
「……解析を続けます。まだ、手がかりは残っているはずです」
その後、回収されたビーコン内部の飛行ログ解析が開始された。膨大なデータが流れるモニターを凝視していたヴァルが、ふと手を止めて声を上げた。
「……これを見て」
その様子に気づいたエミリアが、背後から画面を覗き込む。
「どうしたの?」
「ポックスです」
「え?」
ヴァルが画面の一角を指差した。そこには、事故発生の直後、絶望的な混乱の最中に刻まれたと思われるログが残っていた。
「事故直後……彼は墜落予測を計算しています」
画面に並んでいたのは、常人には理解しがたい膨大な計算式の羅列だった。重力補正、磁気嵐による偏角の影響、そして大気圏突入時の角度――。
あらゆる変数を考慮し、自分たちがどこへ落ちるのかを導き出そうとした痕跡が、克明に記録されていたのだ。
それを見たミリィが、沈痛な空気の中で小さく吹き出した。
「……ふふっ、さすがポックスね。あんな状況でも冷静なんだから」
「ええ、本当にね」
エミリアもまた、頼もしい仲間の足跡に微かな希望を見出し、深く頷いた。
解析開始から三時間が経過した頃、ついにその瞬間が訪れた。
メインモニターに、鮮やかな赤いマーカーが点灯する。
【墜落予測地点:惑星フロストガルド北半球】
【誤差半径:五十キロメートル圏内】
その表示が出た瞬間、会議室にいた全員が弾かれたように立ち上がった。「見つけた……!」
エミリアが歓喜の声を上げる。その瞳には、一筋の希望が宿っていた。
ハンク艦長も力強く頷き、重厚な声で応えた。
「よくやった!直ちに救助隊を編成しろ!」
次章に続く


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