宇宙生徒会長セイヤ 第70話⑦前編 『セイヤ遭難する』

2.宇宙生徒会長セイヤ

登場人物紹介
■ セイヤ  風紀を愛する生徒会長。今日も正論で突っ走る。
■ ポックス 冷静沈着な副会長。論理を愛するバルタン星人。
■ クロ   感情を得ようとする推定10億歳のアンドロイド。
■ リュウジ 頼れる幼馴染。仲間思いの生徒会メンバー。
■ ギル   岩石星人の風紀委員。見た目は怖いが五つ子の父親。
■ カズマ  新聞部の特ダネ記者。艦内の噂話ならお任せ。
■ エミリア 生徒会書記。優秀な参謀役でセイヤの彼女。ミリィの姉(双子)
■ ミリィ  明るく元気な医療部志望。リュウジの彼女。エミリアの妹(双子)
■ ヴァル  穏やかな流体生命体。優しさ溢れる癒やし担当。
■ハンク艦長  コスモ・アカデミア号艦長。豪快な性格。
■ポックル副長 コスモ・アカデミア号副長。冷静沈着。ポックスの父親。
■セイゴ    コスモ・アカデミア号操舵士。誠実な性格。セイヤの父。
■リュウジロウ コスモ・アカデミア号機関主任。リュウジの父。

前回のあらすじ
母船では墜落地点が特定され、エミリアら救助隊がハンク艦長に見送られ出発する。一方、極寒の惑星で遭難中のセイヤたちは、驚異的な団結力で「秘密基地」の建設を爆速で進めていた。サウナやビーチ計画まで盛り込む彼らの暴走にリュウジが絶叫する中、救助の光は確実にその座標へと近づいていた。

第7章「到着」前編

 烈な吹雪を切り裂き、一機の大型シャトルが極寒の惑星フロストガルドへと降下していく。操縦桿を握りしめるのは、救助隊長であり、行方不明となっているセイヤの父――セイゴだった。その横顔には、隊長としての冷静さと、親としての焦燥が同居している。
「着陸地点まで、あと三百……!」
副操縦席のオペレーターが、荒れる機体を制御しながら鋭く報告した。後部キャビンでは、防寒装備に身を包んだエミリア、ミリィ、ヴァル、そして救助隊員たちが、重苦しい沈黙の中で立ち上がった。
 四日…マイナス五十度の極寒に放り出されてから、すでに四日が経過している。通常であれば生存など望むべくもない絶望的な時間だ。だが、誰一人として口には出さない。「生きていてほしい」――祈りにも似た切実な願いだけが、充満する冷気とともに全員の胸を締め付けていた。
シャトルは猛烈な雪煙を巻き上げ、大地を揺らして着陸した。
「ハッチ、オープン!」
セイゴの号令とともにハッチが跳ね上がると、牙を剥いた冷気が一気に流れ込んできた。マイナス五十度を超える極寒が肌を刺す。視界を埋め尽くす白銀の世界へ、救助隊が次々と飛び出していく。先頭を行くエミリアが、遮光バイザー越しに周囲を鋭く見渡した。
「……あれは」
吹き荒れる雪原の先、巨大な金属の塊が半ば雪に埋もれるようにして横たわっていた。見覚えのある機体――セイヤたちが乗っていた調査シャトルだった。
「見つけた!」
ミリィが叫び、雪を蹴って駆け出す。ヴァルもそれに続いた。エミリアははやる気持ちを抑え、慎重な足取りで機体へと近付いていく。間近で見る惨状は想像を絶していた。右翼は根元から無残にへし折れ、船体後部は巨大な力で引き裂かれたように大きく口を開けている。墜落時の衝撃がいかに凄まじいものだったか、その傷跡が雄弁に物語っていた。
「セイヤ!」
「リュウジ!」
「ポックス!」
三人の名を幾度呼びかけても、返ってくるのは虚しい風の音だけだった。
エミリアは唇を噛み、意を決して歪んだハッチに手をかけた。船内は、耳が痛くなるほどの静寂に包まれていた。だが、一歩足を踏み入れたミリィが、怪訝そうに眉をひそめる。
「……?何か変よ」
「うん」
ヴァルもまた、無機質な壁面を見回しながら同意した。
「物が……何もない」
エミリアは弾かれたようにブリッジから居住区へと駆け、次々に部屋を確認していった。ベッド。大型ソファ。テーブル。保存食のストック。調理器具。予備バッテリー。医療品や生活用品に至るまで――さらには、重量物を運搬するための反重力リフター二基までもが、跡形もなく消えていた。そこには、略奪に遭ったような荒らされた形跡はない。ただ、見事なほどに、生活のすべてが持ち去られていた。
「……持ち出しているわ」
エミリアが、誰もいない居住区で静かに呟いた。視線を落とせば、床には重い荷物を搬出した際の擦過痕がくっきりと残っている。ハッチから外へと続く反重力リフターの轍。そして、何度も往復したであろう無数の足跡。そこにあるのは混乱ではなく、明確な意思だ。誰かが極めて計画的に、この場所から物資を運び出したことは疑いようもなかった。
その光景を前に、ミリィの口元がわずかに綻んだ。
「リュウジなら、『全部運ぶ』って言いそうだもの」
ヴァルも静かに頷き、同意を示す。
「ポックスなら、ただここで救助を待つような真似はしないだろうな」
「ええ。きっと自分たちで、より安全な生存場所を探し当てたのよ」
エミリアの言葉に、絶望の色に染まっていた隊員たちの空気がわずかに変わった。その時、背後から重厚な声が響いた。


(後編へ続く)

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