宇宙生徒会長セイヤ 第67話① 「ポックス、バグる」

2.宇宙生徒会長セイヤ

第1章「ポックスの休日」  

 第1章「ポックスの休日」

休日のコスモ・アカデミア号。商業ブロックはいつもより人が多く、どこか穏やかな空気が流れていた。そんな中、ポックスは自室で静かにアナライザー・パッドを閉じる。今日はヴァルとの外出予定だった。

クロのエモーションチップ騒動を経て、ポックスは“感情”というものについて以前より深く考えるようになっていた。さらに、セイヤがエミリアへ迷いなく想いを伝える姿を見たことも、少なからず影響している。感情は非合理的で、制御不能で、時に判断を鈍らせる。そう理解している。それでもヴァルと過ごす時間を心地よいと思っている自分を、最近は否定しきれなくなっていた。だから今日は、少しだけでも素直に向き合ってみようと思っている。

ポックスは静かに制服の襟元を整え、小さく息を吐いた。
「……そろそろ、出ようか」

 その頃、食堂ではリュウジとミリィが昼食を取っていた。休日ということもあり、二人とも完全に気の抜けた表情である。その前をクロが静かに通り過ぎた。リュウジが何となく声をかける。

「クロ、どこ行くんだ?」

クロは立ち止まり、ゆっくりリュウジの方を向いた。

「統計解析の結果、本日ポックスがヴァルとデートする確率が極めて高いと判断しました」
「その確認のため、これから商業ブロックへ向かいます」

数秒沈黙してリュウジが吹き出した。
「なんの統計出してんだお前は!?」
「せっかくのハイスペックを無駄に使いすぎだろ!!」

ミリィも腹を抱えて笑う。
「クロどんだけ暇なのさ!」

クロは真面目に答える。
「本日はアカデミーも休校です」
「現在、特に予定は存在しません」

「だから、そういう事じゃねぇよ」
リュウジの突っ込みに割り込むように、ミリィがニヤニヤしながら身を乗り出す。
「でも面白そうじゃん」
「うちらも行こうよ」

リュウジも笑いながら立ち上がる。
「まぁ、俺らも暇だしな」

クロは静かに頷いた。
「暇な協力者を確認しました」

リュウジが即ツッコミを入れる。
「任務みたいに言うな、それと暇なは余計だ!」

ミリィはすでにやる気満々だった。
「よし!しゅっぱーつ!」

そして三人は、妙にわくわくした様子で商業ブロックへ向かった。

数十分後、商業ブロック前。
待ち合わせ場所には、すでにポックスの姿があった。いつものように背筋を伸ばし、静かに立っている。手元のアナライザー・パッドには、本日予定している行程が細かく表示されていた。
商業エリア、公園デッキ、展望通路。時間配分まで完璧である。

(これはあくまで、円滑な協力体制を維持するための親睦会……あるいは、未知の感情データを収集するための実地調査だ)

ポックスは心の中でそう自分に言い聞かせた。世間一般で言うところの『デート』という定義に当てはまる可能性は否定できないが、彼はあえてその単語を思考の隅に追いやった。論理的ではない言葉を使うと、心拍数がわずかに上昇することに気づいていたからだ。

ポックスは画面を一度確認すると、小さく頷いた。
「……予定通りだな」

その時だった。

「……ポックス」

柔らかな声に、ポックスが顔を上げる。
そこに立っていたのはヴァルだった。

次章に続く

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