第2章「高性能店員」
翌日、開店前の銀河飯店ではダンさんが一人で仕込みをしていた。カンカンカン!!中華鍋の音が店内へ響く。その時、ガラッ。扉が開く。クロが真顔だった。
「おはようございます」
ダンさんは鍋を振りながら視線だけ向ける。
「……ちゃんと来たか」
「勤務開始時刻の12分前です」
「律儀だなぁ……」
数分後、営業開始。クロはホール担当として店内へ立っていた。
「いらっしゃいませ」
完全無表情。しかし妙に丁寧だった。常連客のおじさんが苦笑する。
「新人?」
「はい。本日より稼働します」
「……稼働?」
後方。ダンさんが頭を抱える。
「普通に接客しろ普通に!」
しかしクロは仕事自体は異常に優秀だった。注文を一度聞いただけで完全記憶。
「チャーハン大盛り、餃子二人前、ラーメン麺硬め」
配膳速度も正確。
水が減った客へは即座に補充。
子供には自然と小皿を渡す。
さらに。混雑時には客の回転率まで計算して動き始めた。ダンさんが呆然とする。
「……なんだこいつ」
昼時。店内は満席になっていた。
「ダンさん!五番テーブルまだ!?」
「チャーハン追加ー!」
ダンさんは汗だくだった。
「あーもう追いつかねぇ!」
その時だった。クロが厨房へ入る。
「補助します」
「いや待て待て待て!!」
しかし次の瞬間。カンカンカンカン!!クロ、中華鍋を振り始める。動きが妙に綺麗だった。火力調整。鍋振り。具材投入。全てが正確。数十秒後。パラパラの炒飯完成。ダンさん停止。
「……なんで作れんの?」
「あなたの作っているところを見て覚えました」
リュウジがたまたま昼飯を食いに来ていた。
「クロ、厨房にはいってんじゃん!?」
ミリィも続く。
「すごーい!中華鍋ふってる!」
その後。クロは厨房とホールを同時進行し始めた。
「会計お願いしますー!」
「はい」
「餃子追加ー!」
「確認しました」
「仕込みネギ切れてるぞー!」
「補充済みです」
さらにレジ打ち、売上計算、在庫確認まで開始。
ダンさん、逆にやる事が減る。
「……あれ?俺いま何すればいいの?」
クロ。「まかないでも作っといてください」
「店主にまかない作らせるアルバイト初めて見たぞ……」
夕方。セイヤ達も様子を見にやって来た。
エミリアが店内を見回す。
「クロ一人で店切り盛りしてる」
ポックスも静かに頷く。
「非常に効率的です」
エミリアは少し笑っていた。
ヴァルも優しく笑っていう。
「接客も意外とちゃんとしてるわね」
その時。クロが料理を運んでくる。
「チャーハンお待たせしました」
「感情は少なめですが味は保証します」
数秒停止。エミリア、吹き出す。
「なによその接客!!」
しかし常連客達は妙にウケていた。
「兄ちゃん面白ぇな!」
「追加で餃子!」
クロ。「ありがとうございます」
無表情だった。セイヤは出された炒飯を食べる。
「……美味い」
ヴァルも頷く。
「普通にレベル高いんだけど!?」
ポックス。
「火加減が絶妙です」
ダンさんはカウンター奥で腕を組みながらその光景を見ていた。
「……なんなんだこいつ」
夜。閉店後。ダンさんは疲れたように椅子へ座る。しかし今日は表情が少し違った。
クロが静かに売上データを確認する。
「本日の売上は通常比183%です」
「……は?」
クロ。「店舗を拡張することをお勧めします」
ダンさんは深いため息を吐いた。
「いやいいよ。このまんまで」
クロは真顔で頷く。
「そうですか」
ダンさん。「こんなつもりじゃあなかったんだけどなぁ……」


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